『49歳Nさん、教員。内科で「うつ病」の薬が処方されている方ですが、二ヶ月ほど前に軽い熱が出た後、咳が止まらないそうです。二週間しても一向に軽くならないので、内科を受診して、「マイコプラズマ感染症」の疑いにて精査をしましたが、特別な異常は認められませんでした。
そこで、「うつ病」の傾向から咳が止まらないのかもしれないとのことで抗うつ剤と精神安定剤が処方されたようです。しかし、咳は少しも変わらず、むしろ眠くなるので、飲みたくないとの事。漢方薬を試したい希望で来院。』

Nさんには『麦門冬湯(バクモンドウトウ)』を処方してみましたが、効きませんでした。
そこでインフルエンザや肺炎の後に治りにくい咳が続くときに用いる『竹茹温胆湯(チクジョウウンタントウ)』を処方しました。変更後はたしかに咳は楽になりましたが、完全に止まったわけではありません。

「学校では声を張り上げないと子供たちのパワーに負けちゃいますから、喉を休めようとしても休めないんですよ」というNさんの一言に、この方にはパワーを補給しないと漢方薬の咳止めだけでは治らないのではと感じました。

そこで、治っていく力が落ちて、いつまでも治らないと考えれば、「柴胡(サイコ)」という生薬が含まれた薬の出番です。咳を止める薬にこだわるのを止めて、『柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)』に変えてみたとたんに、咳はほとんど出なくなり、声がかすれなくなりました。

『柴胡桂枝乾姜湯』は咳をとめる薬ではありません。落ちている免疫力を活発にして、からだを元の状態に戻していくイメージの薬です。

ですから、Nさんのように体力を消耗して免疫力が落ち、カゼばかりひくようになって、咳が止まらないときには、咳もピタリと止まり、からだもシャンとする場合がよくあります。実は、この薬は更年期で疲れきった方にも有効です。Nさんには更年期のことは一切触れませんでしたけど…。