『68歳Rさん女性。長年の身体の不調をかかえて来院。症状は複雑で経過も更年期のころからで経過が長い。
頑固な頭痛とカゼをひきやすいこと、胃が弱いのは15年以上になる。ここ3、4年は症状がさらに悪化し、身体の不調は全身に及んでいるが、特に左半身に集中している。
左側の足先から腰にかけて、ピンと張ったようないやな感じになり、そのあと左側全体の動きがギクシャクして、左眼の奥から痛みが始まる。その後の頭痛がひどく、吐き気がして、数日寝込んでしまうとの事。』

こんな方が受診されると、まずは脳神経外科に一度受診をして下さいといいますが、Rさんはもうすでに脳ドッグも受診済みでした。漢方薬にも詳しく、『呉茱萸湯(ゴシュユトウ)』『釣藤散(チョウトウサン)』『六君子湯(リックンシトウ)』を御自分ですでに飲んでいらっしゃいました。確かにこちらでも処方したくなる薬です。

「以前飲んだ『釣藤散』が効いたようなので、処方してもらえますか。頭痛さえ治ればあとは我慢できますから…」というので、まずは本人の言いなり?に処方してみました(苦笑)。

頭痛にはいいようでしたが、左半身のつっぱりや痛みは残っていて重苦しいとの事。そこで、おなかの症状はずっと続いているし、おなかが冷たく軟らかいので『大建中湯(ダイケンチュウトウ)』を加えて飲んでもらうことにしました。

飲んでもらった感想は「まあまあで、おなかが温かくなり気分もよくなった。」という事でした。しかし、どうもすっきり効いた様ではないようです。私はせっかちの「変えたがりや」ですので、Rさんには納得してもらって薬を変更することにしました。

次に処方したのは『人参湯(ニンジントウ)』です。左半身の不明な症状はあるものの腹力のない冷たいおなかで、胃腸が弱い印象を強く受けたからです。結果として、ドンピシャリでした。

頭は少し痛むが、以前よりずっと良く、とにかく食欲が出てきたようでした。疲れやすいのは同じでもクタッとした感じがしないとの事。体調が良くなってからRさんは以前の状態を自覚できるようになったとお話してくれました。

「考えてみると、こういう疲れ方はずっと前から同じでしたね。長く寝込むことはなかったけど、それを不思議とも思いませんでした。」よくカゼをひくというので『桂枝湯(ケイシトウ)』を処方したところ、長年の頭痛も良くなったらしいです。

以後、Rさんからは左半身の不快感の訴えはありませんでしたが、体調を整えることが大事なことを痛感した貴重な症例でした。