今回から数回シリーズで「生理痛と漢方」のお話をします。まず、患者さんに登場してもらいましょう。

『28歳、Lさん。最近ひどい生理痛で悩んでいる。冷え症もあり、手足は冷たい。鎮痛薬は手放せないが、漢方薬を試してみたい希望で来院。』

Lさんは、色白な方で、舌を診るとややうすいピンク色でちょっと歯痕(歯の痕が舌に残る)がありました。この方には「冷え症」もありましたが、こちらを治すには大きく2通りの方法があります。「(気・血・水のいずれにせよ)巡りをよくして温める」というのと「暖かみを補充する」という方法です。これは、ストーブに空気をふいごで送るのと、原料の薪を補充するイメージと同じですね。

私はLさんに「冬場にアカギレができやすくないですか?」という問いかけをしました。答えはイエスでした。

なぜ、こんな問いをしたかというと、「血虚」(以前の号を参照)の有無、つまり、血液の栄養循環が隅々までいきわたっているかを確認したかったのです。実際にLさんは、爪が割れやすく、皮膚もカサカサしていました。そこで「血虚」を治す生薬を選ぶことになるわけですが、その中でも生理痛のような子宮の筋肉のしこりを和らげる生薬には『芍薬(シャクヤク)』があります。

Lさんにもう一つ注目する所見がありました。それは舌の歯痕です。
コレは以前お話した「水毒」の所見で、やはり生理のときはむくみが出やすいとの事でした。

この両者を治す生薬が含まれているもの、つまり、血液の循環を良くして、体内の水分のバランスを整える薬のひとつに『当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)』があります。今回はこちらを処方しましたところ、冷えやむくみはよくなったが、生理痛は以前よりは軽いものの時折発作的に痛いことがあるとの事でした。そこで『芍薬』のパワーを増強するために『芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)』という即効性のある薬を痛いときだけ飲んでもらうように指導しました。

3ヶ月後に来院したときは「あのよく効く薬はあまり飲まなくてもいいようになりました」とのお話でした。これが漢方薬の不思議な点で、鎮痛剤を多用していた方も不要になるケースが珍しくありません。