『41歳Nさん。32歳で第2子出産後、実家の仕事に復帰し、実母の病死や養父の老人ホームでのトラブルで頻回の呼び出し、PTAの役員になったりで、いろいろなことが重なり、不眠がひどくなった。
精神科を受診し、安定剤・睡眠導入薬などを飲んでいたが、朝、尿が出なくなり中止。腰痛もあったため、近医で『補中益気湯(ホチュウエッキトウ)』『加味逍遥散(カミショウヨウサン)』を処方されたが、あまり有効ではなかった。
最近はイライラして子供に当たることが多い。仕事が忙しく、体中ガチガチ(?)するとの事。不安や落ち込みはないが、目が冴えて眠れない。夜中の2時頃、首から上に汗が出る。眠りが少ないためか、ふらつきもある。漢方薬を希望のため来院。』

  来院時、Nさんはいかにもストレスの固まり(?)といった印象でした。まずは『抑肝散(ヨクカンサン)』を飲んでもらうことにしましたが、飲んだ翌日から緊張が取れて、あくびが出るようになったとの事。「久しぶりに8時間(以前は3時間位)眠れたし、子供を叱りつけることが無くなり、スルッとかわせるようになりました。」と外来でも笑顔がみられるようになりました。

  睡眠導入薬は半錠にして時々飲む程度のようですが、すっきり眠れないこともあるため、『酸棗仁湯(サンソウニントウ)』(以前の号で紹介)を寝る前に一緒に飲んでもらうことにしました。その後は睡眠導入薬なしで眠れているようです。

  漢方薬のおもしろい症例報告にペットのメス犬に『抑肝散』を処方した例があります。寝ても周りを引っかいてカリカリ音を立て、夜中にしょっちゅう小・大便をして朝まで飼い主を寝かせてくれない。獣医からの睡眠薬は強い薬になると、足腰が立たなくなり、大小便も垂れ流しになり、中止。早朝から奇声を発し、近所迷惑との事。『抑肝散』を飲ませたところ、よく寝るようになり、顔の表情がとても穏やかになったようです。

  抗うつ薬や睡眠導入薬はとても良いお薬ですが、西洋薬に対する不安が強かったり、また内服していても体調の悪さを訴えられることも多いです。取り巻く環境のストレスが多いためなのか、現代社会はペットでさえも漢方医学的には『抑肝散』を必要としているのかもしれません。