今回は、「ニキビ」と漢方薬にまつわるお話です。

『24歳、Hさん、女性。子供の頃からアトピー性皮膚炎があるが、成人してからは悪化していない。最近ニキビが気になり、女性ホルモンの乱れから起こることも友人から聞かされて当院に来院。』

「ニキビ」にもいろいろなタイプがありますが、Hさんは顔の熱感があり、化膿してジクジクしているようなタイプでした。東洋医学的には、「寒熱」の考え方は大切なことは以前よりお話していますが、この方の皮膚は「膿があって、炎症をおこして熱がこもっている」状態です。

つまり、「清熱」(熱をとる)してあげることは一つのポイントですが、さらに「排膿」(膿を発散させる)も重要です。漢方薬は生薬の複合剤ですから、この両方を満たしてくれる薬もできるのですね。

「ニキビ」によく使われる漢方薬には『清上防風湯(セイジョウボウフウトウ)』『荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ)』などがありますが、私はHさんには『荊芥連翹湯』を処方しました。処方薬の基本骨格は、「清熱」+「排膿」の生薬でいいのですが、それならば『清上防風湯』でも事が足りるはずです。なぜこれを処方しなかったのでしょう?

実はHさんの手をみたんですね。皮膚がカサカサしてちょっと黒っぽい印象でした。

これは、「血虚(ケッキョ)」(詳細は以前の号を参照)で血液の栄養が末梢まで行渡らない状態ですから、「補血(ホケツ)」の生薬がプラスされた方がより効果的と考えたので、これがさらに加わった『荊芥連翹湯』にしたわけです。『清上防風湯』でも有効かもしれませんが、その人の状態に合わせた薬を選択できるのが漢方薬の利点なのです。

さて、以前に『清上防風湯』を処方した方が次のようなことを話してくれました。

「ニキビでもらった薬ですけど、余ったら先生が『喉が腫れて痛いときにも効く』と云われたので試したのですけどとても効きました。」ニキビの薬が本当に効くの?と思われる方がいらっしゃると思います。でも、よく考えてください。扁桃腺炎なども「清熱」と「排膿」を必要としている状態ならば、効くはずです。

西洋医学は、ニキビは皮膚科、扁桃腺炎は耳鼻科の薬と色分けしがちですが、東洋医学は病名にこだわらず患者の状態と薬の関係を重要視します。適応症がニキビであっても、状態によっては蓄膿症やモノモライなどにも有効なのは漢方薬では決して珍しくありません。このように西洋医学的な領域や適応症だけで考えると漢方薬の本来の効果を見落としがちになってしまうことがあるのです。