『48歳Iさん。約5年前から疲れが取れず、いつもだるい。疲れるとイライラしたり、動悸がしたりするし、カゼをひくと治りにくい。最近は頑固な便秘になり、市販の下剤を飲まないと何日も出ない状態。神経科を受診して薬を処方してもらうが、眠くなるばかりであまり症状は改善されず、友人に漢方薬を試してみてはと云われて当院受診されました。』

Iさんは、色白(というより青白く)で、大柄で目立つ体型でしたが、生気がない感じで、肌もカサカサとして乾燥しており、漢方医学的には「血虚(ケッキョ)」といういわゆる血液の栄養分が身体にいきわたっていない状態でした。

自覚症状を並べると、疲れやすい・たちくらみ・肩こり・腰痛・手足の冷えやしびれ・イライラ・動悸・片頭痛・胸やけ・胃もたれ・便秘等等、たくさんありすぎるほど出てきました。

最近は私もこういう方の話にも慣れてしまって、あまり驚かなくなってしまいました。要はこのような方はからだ全体の調子が悪く、その違和感で占領されてしまったような状態なのでしょう。

普通一般の治療法ならば、こういう不定愁訴だらけの方に処方する薬の種類はあまりありません。私自身もうまくいかなくなると打つ手がなくなって、精神安定剤を多用した時期も過去にありましたが、人によってはIさんのように効くどころか、眠くなったり、ボーッとしたりするだけでさらに体調不良をおこす方も少なくありませんでした。

Iさんのお話を聞くと、どうしても働き続けなければならない状況がここ数年続いていたようでした。そこで漢方薬で治療するならば、多彩な自覚症状にはとりあえず目をつぶって、体力の底上げをするタイプがよろしいかと考えました。

長く働き続けてきた仕事からくる疲れ、「体中がすっきりしない」という訴え、顔つきや身体の診察の印象から『十全大補湯(ジュウゼンダイホトウ)』を処方し、頑固な便秘には『麻子仁丸(マシニンガン)』(以前の号で紹介済み)を少し加えてみました。

結果はウソのように?有効で、飲み始めてから身体が痛くなくなり、生活自体が楽になったという事でした。『十全大補湯』は最近では、抗がん剤の治療後の免疫力の向上にも有効であるという報告もあり、いわゆる「元気薬」としての評価の高い漢方薬です。

漢方薬を使うことと同時にIさんには「仕事人間」からの脱皮もお勧めしました。真面目な方で自分が働かないと職場が困るだろうと感じているようでしたね。仕事に真面目に精を出すのは良いことですが、身体を壊してまで職場に尽くすこともないのです。

働く女性はまだまだ大変です。でも、自分の身体も大切にして下さい。