前回まで「気の異常」に関わる話をしてきましたが、今回より様々な症例を紹介しながら、漢方薬の妙について述べましょう。さて、今回の患者さんは、「汗」がキーワードです。

『58歳、Fさん、女性。やや肥満。体全体の熱感、じっとりとした汗が不快でたまらないとの事で来院。』

この方は、「むくみ」もありました。「むくみ」というと『水毒』(以前の号で確認を)が思い浮かびますね。『水毒』は基本的には「水」が余っているところと足りないところのアンバランスでしたね。それを見分けるには「口の渇き」ですが、Fさんはありませんでした。となると、「水の偏在」なくて「水が余っている」イメージなのです。しかも熱感もあります。水が余っている箇所には熱はこもりやすいのです。

私は越婢加朮湯[エッピカジュツトウ]を処方しました。飲み始めてすぐに尿の量が増え、全身のむくんだ感じがとれて、熱感も徐々に改善したとの事でした。

Fさんの肌をさわるとジトーッとした湿った感じなんですね。つまり、水が「表」(以前の号で確認を)に余っている状態ですから、この余った水を捨ててやればいいのです。「たまったものは捨てる」という理屈は分かりやすいですよね。

そこで「表」の水を「裏」に引き込む生薬を選んだのです。麻黄[マオウ]と石膏[セッコウ](以前の号で確認を)の組み合わせです。これは強制的に排水してくれて、石膏には「冷やす」作用もあるのでFさんには一石二鳥でした。でも強力な薬なら、胃を荒らすのでは?と思う方へ。ご心配なく、ちゃんとこの薬には胃を守る生薬も含まれていますから。比較的長期間飲まれても胃の負担は少ないです。

あれ?麻黄は桂枝[ケイシ]との組み合わせで「発汗作用」あるのでは?と思った方?このシリーズを熟読してますねえ。

そうなんです。麻黄は基本的に「水」を外へ捨てる生薬なのですが、「表」に汗として捨てるときは桂枝と、「裏」(体内)に捨てる(尿など)ときは石膏と組むというように生薬でも仕事によって相手を選ぶのです。人でもそうですね。いい仕事するときは、組む相手が大切です。