『46歳Q女性さん。数年前から夏場に週の仕事始めの月曜になると、一日だけ下痢をするとの事。しかし、秋になると治る。漢方治療にも興味があり、来院。』

話を聞く限りでは仕事のストレスが原因という印象ですが、Qさん自身はストレスとは無縁?のような大らかな性格です。下痢は暑さから生じるのではなく、お腹が冷えるときになりやすいようです。夏場にクーラーで冷えすぎるなら話は分かりやすいのですが、それも無し。冷たいビール好きでもないらしく、困ってしまいました…。

Qさんが急に思いついたように口走ったのは「夏といっても6月位からなんです。そういえば、下痢が起こるのは、釣りの翌日ですね。」聞くところによると、渓流釣りで腰まで浸かりながら一日中楽しむというのです。6月といえども、まだ川の水は冷たく、そのためにお腹が冷えきってしまい、翌日の月曜日には下痢となったわけです。

原因が判明したところで、Qさんにはお腹を温め下痢を止める『真武湯(シンブトウ)』を処方しました。また、釣りには使い捨てカイロを携帯してもらうように指導したところ、見事に下痢はおさまったとの事です。

『真武』とは玄武のことで、北を支配する神様の意味です。漢方医学の五行論でいえば、北は水の行で、寒さ・冬・水分などと関連があるとされています。つまり、『真武湯』は冬のように体が冷え、下痢や浮腫など水が貯留した状態を治療する漢方薬といえます。

『真武湯』のように、漢方薬には四方を支配する中国の神様の名前をつけたものがいくつかあります。例えば、『白虎湯(ビャッコトウ)』の『白虎』は西方の神様で、季節は秋、白と関係があり、この生薬には、白い石膏が含まれ、体の熱を冷ます働きがあります。つまり、夏に起こるような体のほてりや熱を取り除き、秋のようにさわやかにしようという漢方薬です。

Qさんのように、原因さえわかれば、薬の選択には苦慮せずに済みますが、なかなか初診の患者さんから隠れた?原因を探しだすのはご本人からお話して頂かない限り難しいケースが多いですね(苦笑)。