便秘は、成人のみならず小児にもありふれた症状ですが、何日間排便が無ければ便秘なのか明確な定義はありません。2011年に行われた調査によると、小学生の約4割が排便1日1回未満である結果が出ており、一方では同じ調査で8割近くの母親が子供の排便状況は順調であると回答したとの事です。

 このように親御さんにも見過ごされがちな便秘ですが、子供自身にとっては大きな問題です。お腹が張って腹痛の原因にもなりますし、放置しておくと排便を起こす腸管の収縮もしだいに起こりにくくなり、さらに便が溜まるという悪循環に陥ります。また、便が固くなって排便が苦痛になるのでますます排便を嫌がるようになることも一因です。便秘が悪化して遺糞症になってしまった場合には治療の方も大変ですから、その前に早い段階で便秘症をみつけて、対策を講じることも重要です。

 西洋薬で小児の便秘によく用いられるのは緩下剤ですが、お子さんによっては刺激が強い場合もあります。小児の便秘でのお勧めの漢方薬は『大建中湯(ダイケンチュウトウ)』です。他にも、以前に虚弱体質で紹介した『小建中湯(ショウケンチュウトウ)』も用いることもあります。これらと同時に、最初は詰まっている固い便を浣腸で出すこともありますが、漢方薬を併用することで自然な排便習慣がつくようになります。

 『大建中湯』を構成している生薬は、すべてお腹を温める効果があります。内側からお腹を温めて血行を良くして、便秘のみでなく下痢も改善します。

 ユニークなのは、構成生薬のうち「山椒(サンショウ)」「膠飴(コウイ)」は腸管のぜん動を促進する効果があるのに対して、「乾姜(カンキョウ)」「人参(ニンジン)」はこれらを抑制する働きがある点です。漢方薬の作用は、腸管を直腸側から動かして溜まった便が自然に動くように促すものですが、ぜん動運動が不十分であればこれを促し、行き過ぎた場合には緩やかに歯止めをかける働きをします。これらの一連の作用によって自然な排便を促すわけです。

 このように、ある生体の働きを一方的に亢進させるのでも抑制させるのでもなく、中庸(ちゅうよう)で自然なところに落ち着かせてくれるという作用は漢方薬の大きな特徴です。