『4歳Mちゃん。母親がアトピー性皮膚炎。カゼをひきやすく、中耳炎と扁桃炎も起こしやすい。
湿疹は1歳ごろから出始めて、便秘が続いたり、汗をかくと悪化する。弟の出産前後から「赤ちゃん返り」がひどくなり、皮膚症状もますます悪化し、最近は体をかきむしって、肘関節のあたりは一部ただれて、分泌液も出ている。母親が「ステロイド外用薬は使わないで」と、漢方治療を希望して来院。』

母親の漢方熱望?に応じて、ステロイドは使わず、『黄耆建中湯(オウギケンチュウトウ)』を飲んでもらうことにしました。

二週間目あたりから背中・腹部の湿疹は改善し、四週目からは手足・顔面の発赤も消えてきました。そのまま継続して飲んでもらいましたが、二ヶ月ぐらいから便秘も解消し、中耳炎の再発などもみられなくなりました。

『黄耆建中湯』の効能・効果は「虚弱体質、病後の衰弱、ねあせ」とありますが、ここで注目したいのは「汗」です。「アトピー性皮膚炎持続例の悪化因子」について調べた報告の中で「汗の成分が皮膚のバリアが脆弱な人には痒みの刺激になると考えられる」と記されています。

虚弱な体質の小児には『小建中湯(ショウケンチュウトウ)』がよく使われることは何度も紹介しましたが、私の使用経験では『黄耆建中湯』を使うと、特に痒みが取れてくるのが大きなポイントである印象があります。

Mちゃんの母親のように「アトピー性皮膚炎に最も効く漢方薬は何でしょうか?どのくらい飲むと完治するのでしょうか?」というご質問は多いのですが、回答は「これがアトピー性皮膚炎に最も効くと知られている漢方薬はありません。

人それぞれに合う、合わないということもありますし、漢方薬のみに頼って悪化した人も少なくありません。あくまでも漢方薬は治療の選択肢の一つであり、絶対的なものではありません。ステロイド外用薬も毛嫌いせずにうまく使っていくことが大切です。」とお話しています。

Mちゃんのように小児アトピー性皮膚炎も漢方的視点で捉え、それに適応する症例を選べば、『黄耆建中湯』などは治療に有効な選択肢の一つとして位置づけられるのではないかと思います。