『35歳M歳さん。7日前に風邪をひいた。近医にて抗生剤・去痰薬・解熱鎮痛薬を処方され、熱はすぐにひいたが、その後も咳が止まらず、咳のために夜も熟睡できない。痰がらみもあり、痰は黄色で粘っこい。咳は夜間になると悪化して、横になるとひどくなる。とにかく咳をどうにかしてほしいという希望にて来院。』

  Mさんは妊娠中で咳き込むとお腹も張るようなので、切迫早産の心配もあって来院されました。最近は「副鼻腔気管支症候群(SBS)」という概念があり、マクロライド系抗菌薬や去痰薬が有効とされてはいますが、なかなか治りきらずに苦慮されている方もいらっしゃいます。急性期を過ぎたいわゆる「慢性咳嗽(がいそう)」を漢方医学としてアプローチする場合にまず重要な点は「常に喀痰があるかどうか」です。

   常に痰がある場合は、次に「痰の性状」で処方を考えます。

  1. 透明で多量な痰
  2. 黄色から白色で大量な痰
  3. 黄色い粘着な痰
に分類しますと、Mさんは③に該当し、『竹N{温胆湯(チクジョウウンタントウ)』を処方しました。「夜間、寝ようとすると咳のために眠れない」点はこの漢方薬を使用する際のキーワードになります。

  一方、①の場合は、特に明け方に痰や咳が増えることが多く、『苓甘姜味辛夏仁湯(リョウカンキョウミシンゲニントウ)』を処方したりします。②の場合は、日中・夜間かまわずに咳や痰があり、『清肺湯(セイハイトウ)』は有効です。

  このように、漢方薬は痰や咳に関しても、細かい配慮が構成される生薬によってなされています。痰が比較的少なく、「咳喘息・アトピー咳嗽」に関しては次号に解説したいと思います。慢性咳嗽で悩まれている方は漢方薬も治療の選択肢に一つに加えてもよいのではないでしょうか。