漢方の診断は「望(ボウ)・聞(ブン)・問(モン)・切(セツ)」という四診で行いますが、「望診」はその中でも最も重要な診断法です。

患者さんを診察室に呼び入れたときの反応の仕方、姿勢、動作、立ち姿、顔色、皮膚の状態などを観察するとともに、全体的なイメージをよく見るわけです。

じろじろ見られる患者さん側からはちょっと恥ずかしいかもしれませんが、漢方治療をするには若い女性であろうと「なめるように全身をくまなく観察」せざるをえません(誤解のないように)。

この「望診」により、とくに女性三大漢方薬(『当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)』『加味逍遥散(カミショウヨウサン)』『桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)』)はほぼ決まるといっても過言ではありません。

「待てど暮らせど来ぬひとを宵待草のやるせなさ」とうたわれた竹久夢二の、有名なあの絵(立田姫?)がまさに『当帰芍薬散』の「証(ショウ)」であるため、漢方医はこれを「当芍(トウシャク)美人」と呼び、この薬を使用する目標としました。

すなわち、色白で、顔は面長、柳腰で立ち姿はすっきり、声は優しく耳当たりが心地よく、しぐさがおっとりしている、「ちょっと手を差しのべてあげたくなる日本美人」と漢方医の大家が称したそうですが、こういったイメージが『当帰芍薬散』にぴったりあう「証」なのです。

『当帰芍薬散』は女性の聖薬といわれ、少し虚弱な女性の身体を温め、「水毒(スイドク)」(体内の水のバランスが悪い状態)をとり、月経を整え、痛みを去り、受胎を安んじるといわれます。

「水毒」の症状には、頭痛・めまい・嘔気などがみられることがよくありますから、「当芍美人」は実際にフラフラすることが多いのでしょう。また、この薬は「冷え症」の中でもむくみが出やすい方にも有効です。

みなさんは『当帰芍薬散』の「証」ですか?このコラムを読まれた後は、外来に「自称、当芍美人」が多く来られるかもしれません(笑)。