『36歳Mさん。子供の頃から疲れやすいが、最近特にひどい。夜に出かけたりすると翌日はとてもつらい。手足はいつも冷たく、寒いと皮膚が真っ白になる。内科でいろいろ検査を受けたが特に異常はなし。子供の頃から便秘で下剤を服用しているが、非常にお腹がはる。不眠で睡眠導入薬を服用しており、肩こり・頭痛で時々鎮痛剤も使用する。口の渇き、多汗、身体のほてりなどもある。漢方薬を試したい希望で来院。』

 Mさんに食事について聞くと「朝・昼はあまり食べられない。夜はたくさん食事を取り、お菓子も食べている。」という状態であったため、規則正しい食事について指導し、まず胃腸の機能を高めるため、『六君子湯(リックンシトウ)』を処方しました。

 一ヶ月後、便秘が改善し、お腹の張りも良くなったとの事で、下剤は最近使用していない様子でした。
 さらに薬を続けてもらい2ヶ月後、睡眠導入薬を使用しても夜中目が覚めて、少しうつ気味だというので『香蘇散(コウソサン)』を併せて処方しました。翌月、お腹のガスが出て、とても気分が良く、朝のだるさが少し軽くなったとの事で、外来に来られたMさんの顔の表情が今までと違って元気そうでした。いつもは午前中ボーッとしていたのが『香蘇散』を飲むようになってからかなり改善したようです。

 『六君子湯』は単なる胃薬ではない点は以前の号でもお話しましたが、さらに不眠やうつを目標に『香蘇散』を合わせたことにより、気剤(「気」の異常に対する薬)としての効果も増強したと思われます。この2種類の漢方薬の合方は有名で、パニック障害にも有効なことも知られています。

 ちなみにMさんは夜のお菓子はやっと止められ、朝は果物を食べるようになったそうで、診察室に入ってきた姿は別人のように生き生きとしていたのが印象的でした。夜のお菓子好きな私にとってはMさんをお手本としたいところです。