『14歳Kさん。学校へ行く気はあるのだが、朝が特に調子が悪くて起きられない。
ここ数ヶ月は特に調子が悪く、半分位しか登校していない。小児科で検査を受けたが、大きな異常はなく「起立性調節障害」といわれた。
薬を処方されたがいっこうに良くなるきざしがないのでやめてしまったとの事。一日中頭痛がするし、学校を休んでもフニャッとして動けないので、ただ寝ている。ときどきお腹が痛くなり、下痢が続くこともある。母親と一緒に来院。』

Kさんは身長160センチで体重は40キロとふくよかとは程遠い体型でした。
こういう症状が続くと、よく「登校拒否」と間違われ、あちこち病院を渡り歩いて検査を繰り返す例が多いですし、「登校拒否」と言われ続けていると、本人自身もそうであるような気分になってしまうこともあります。

普通に治療していても、効果があがらない場合は、ある意味で「小児科泣かせ」かもしれません。

来院した時は、青白い顔をして弱々しい印象で、お腹も触るとフニャーと柔らかく、脈も弱いといった漢方でいう「虚証」タイプそのものでした。

そこで、体力を補う「補剤」が必要と思われたので、Kさんのような「胃腸の働きが衰え、元気がなく、疲れやすい」向けの『補中益気湯(ホチュウエッキトウ)』を飲んでもらいました。

1週間飲んで「なんとなく動けるような気になったので学校へ行ってみたけど、やっぱり疲れて長続きはしませんでした。
でも、少しいいような気がします。」その後、身体の調子がよくなってきたようなので、『補中益気湯』をしばらく続けることにしました。

4週間後、めだって食欲がでてきて、それまで「食べ盛り」というのを見たことのなかったお母さんが、心配するほど食べるようになったとの事。まだ顔色は青白いけれど、表情が生き生きとして、診察室でもニコニコ笑うようになりました。たいした変化です。

二ヶ月たってかなり調子がよくなった頃、「生理がちゃんとこないんです。二日くらいで終わっちゃうし。」と自ら生理のことを聞いてくるようになりました。

そこで、『補中益気湯』に加えて、『当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)』を飲んでもらいました。

思春期の女の子が、生理のことを自分からいいだすのはよほどのことでしょう。逆にそれだけこちらを信頼してくれた証拠かもしれませんが、産婦人科医たる者が生理のことを初めに聞かなかったのは反省せねばなりません。

この二つの薬で体調はさらによくなり、体重は増えていき、育ちざかりとは恐ろしいかな、一ヶ月に一キロ位ずつ増えたようです。
しばらくぶりに再会したのは、生理をずらしたい希望で来院された時でしたが、一年くらい経過していて体重はほぼ十キロ増え、堂々たる?女の子に変身していました。