『58歳Hさん。半年前から膝の痛みで歩行困難となり、数ヶ月で症状が悪化。整形外科では変形性膝関節症の診断で注射を定期的に施行しているとの事です。特に立ち上がるときと階段を降りるときが辛く、鎮痛剤で何とか痛みは和らいでいるものの腫れはひかないようです。当院に漢方も試してみたいとの理由で来院されました。』

Hさんは、色白でもち肌、ぽっちゃりとしたいわゆる「水太り」体型の方でした。ご本人曰く、「水を飲んだだけでもすぐ太りやすく、最近は身体も重く感じて疲れやすいです。」漢方医学的には、「水太り」は重要なキーワードになります。このようなタイプの方は「多汗」の症状も多くみられます。

『防己黄耆湯(ボウイオウギトウ)』はHさんのような方のためにあるような薬でして、まずこちらを処方しました。ただ、膝関節の熱感も訴えるので、熱をさばく意味で『越婢加朮湯(エッピカジュツブトウ)』も少量足して飲んでもらうことにしました。

飲み始めて一ヶ月後には膝の痛みと腫れは確かに良くなっていました。鎮痛剤をあまり飲まなくなった点がその効果のようです。その後は長時間の歩行などでは症状が悪化するときもあるとの事ですが、比較的調子は良く、汗もあまりかかなくなった点も喜んでいました。

調子が良いと積極性もでてくるものです。本人はその後は食事などにも気をつけて体重を5キロ減らすのに成功しました。当然ながら膝関節の負担も減りますね。

今も半年以上経ちますが、『防己黄耆湯』はときどき飲んでもらっています。このように『防己黄耆湯』がよく効く方には長期に飲んでもらうことにより、膝関節痛がかなりラクになる場合が多いですね。

ただし、『越婢加朮湯』は「麻黄(マオウ)」が含まれているので、胃腸の弱い方や高齢者、心臓・腎臓疾患のある方に注意して使用しなければなりません。Hさんには少量で使用しましたが、『防己黄耆湯』とはとても相性のよい薬でして、うまく使うと熱感をもつ腫れには大変有効です。