過日の「行政刷新会議」にて「漢方製剤の保険外し」が答申されました。
この会議側の論理は「薬局・薬店でも漢方薬は買えるものである」との主張のようであります。

漢方製剤の保険外し問題は、17年前にも議論されたことがありましたが、150万人の「反対署名」を当時の厚生省に提出し、幸いにも保険外しを逃れました。

今回も日本東洋医学会は、
「医師が処方する漢方薬と一般用医薬品で販売される漢方薬は同じではない」
「西洋医学と漢方薬の併用によってがん患者をはじめ多くの難病治療が可能になっている」
「漢方治療を受けているのは女性が多い(約60%)」
「漢方には専門医制度がある」
といった点を強調し、今回の答申には徹底的に反対する意思表明をしております。

西洋医学は日々進歩していますが、必然的に細分化していく道をたどる性質を持っております。

しかし、私達人間は決して機械部品の寄せ集めではありません。心身両面から総合的に複数の不具合を同時に治す考え方と手段をもつ漢方医学の価値を知ることは、西洋医学を縦糸とすれば、漢方医学は横糸のようなもので、両者の強調によって布が織られるがごとく医療の幅を拡大する有効な手段となります。

漢方は今や世界中で注目され、多くの医師たちが日常の診療で使うようになりました。もちろん、お隣の中国では古くから鍼灸とともに様々な動・植物や鉱物を加工して、薬として病気を治療していました。

初めはドクダミやゲンノウショウコ、ニンジンなどを乾燥させ、細かく砕いて服用していましたが、それぞれの薬草は独特の有効成分をもっており、治療できる症状や病気の種類が異なるので、そのうち薬草を様々に組み合わせて用いるようになりました。

病気の本質を治療するとともに表面に出てくる症状もいっしょに解消するために2種類以上の薬草を混合して薬として形づくられてから、少しずつ改良され、自然淘汰されて現在の漢方薬となりました。

ですから、多くの部分を人が人工的に作って数少ない人を対象に試験的に使ってみて、安全で効果的であると判定された「単一合成剤」の最新西洋医学と、自然のものをいろいろと組み合わせて非常に長い歴史の中で、膨大な数の人に使われて、安全性と有効性がその歴史の中で証明されて現在まで生き残った「自然複合成分混合剤」の漢方薬では、全く別の範疇の治療薬ともいえるでしょう。

西洋薬でも漢方薬でも、目の前の患者にどちらを用いるかは、今までは医師の裁量でした。しかし、現在は病気の治療は患者が主役という「クライエント中心療法」という考え方がしだいに浸透しています。

病気の診療をひとつのドラマとするならば、どんな治療でもあくまでもその主役は患者自身であり、医師は脇役として主役をもり立てなければなりません。当然、治療法の選択の最終決定権は患者側にあるわけです。

このような背景から、もし患者が漢方を使った治療を選択したい場合に、これからの時代はどのような医療環境を患者に提供してくれるのでしょうか。

漢方医学と西洋医学の強調によって世界に類のない医療展開を期待していた者からは、今回の答申は実際の医療の現状とわが国の誇る「漢方医学」の真価を全く理解していないと言わざるをえません。

「漢方を推進する」とマニフェストに掲げていた点はどう解釈すればよいのか疑問に感じるのは私だけでしょうか。