「気」という言葉は日常生活でも、元気・電気・磁気・やる気…などよく使われますし、「病は気から」ということも聞いたことがありますね。

初回に漢方医学では「気」という概念があることはお話しましたが、体にあっても目にみえないし、量も測れないし、なんかウサンくさいですね。要は体の調子を整えるエネルギーみたいな感覚でとらえてよいのですが、漢方薬を決めるのに必要な考え方ですので解説します。

「気」の異常は、精神疾患ではなく、誰にでも起こりうる症状です。この異常には大きく3つに分類できます。

  1. 「気の上昇」…下から上に気が上昇し、気は上が一杯で下が足りない状態で、イライラ、逆上、怒りっぽい、発作的におこる頭痛、動悸、吐き気などがよくある症状です。上半身が熱く、下半身は冷たいなどもそうです。
  2. 「気うつ」…一般的に云われている「うつ」とは、違います。どこか一箇所に気がたまり、出て行かない状態で、気の巡りが悪くなっている状態です。一箇所でたまると、上からも下からも気の通りが悪くなるので、お腹を触ると、硬くなっていることもあります。
  3. 「気虚」…全体的に気が不足している状態です。健康な方でも仕事で失敗した、親族を亡くした、などストレスでいくらでもおこり得ます。

さて、3.の場合は足りないものは補えばいいのですから、漢方薬では「補気剤」が含まれているものを使用します。

生薬では「人参(ニンジン)」と「黄ぎ(オウギ)」は共に該当するのですが、これらは役割が違います。景気の話で気をお金に例えると分かりやすいでしょうか。景気が悪いのも2通りあって、本当にお金がないのと、今の日本のように金があるのに巡らないのがあります。

前者のような貯金が必要な状態は「人参」、後者の状態は「黄ぎ」です。巡らすお金がないと「黄ぎ」は使いどころがないし、「人参」が必要になります。使い方としては、「黄ぎ」を使うと巡る結果として消費しますから、とりあえず最初は貯金でじっと「人参」のみで耐えて、そろそろ貯まって巡らしたい時期になると、両方が入った薬に切り替えるといいわけです。

補中益気湯〔ホチュウエッキトウ〕はこの両者が含まれている漢方薬ですが、決して虚弱体質の方の薬ではありません。元々は感染症で体力が弱ったときによく使われていた薬で、戦争中は兵隊さんのように体力が本来あって感染症で倒れた人の回復薬だったようです。

薬の名称の「中」とは「お腹(脾)」を意味するので、エネルギーを産生する脾の働きを補った結果、「益気」をする薬なのですね。

次回は「気うつ」に焦点を当てたお話をします。