肩こりは誰にでも程度の差はあれ起こりうるもので、日常的なだけに長く医療の対象になってきませんでした。また、西洋医学ではなかなか改善しにくい症状の一つであり、使う薬も鎮痛剤、消炎剤、筋弛緩剤などに限られがちです。一時的に症状をやわらげることが可能でも、しばらくすると症状がぶり返したりすることも少なくありませんね。

一口に肩こりといっても、原因は様々で、単なる筋肉疲労や血行障害によるものから頚椎(骨・神経)の異常、高血圧、心臓病、さらには他の内臓の病気が原因になっていることもあります。もし、肩こりの陰に重大な病気が隠れているならば、その治療が優先されます。そうでない肩こりに対しては、ある程度漢方治療も有効な手段となる場合があります。

急性の肩こりによく用いられるのは、カッコントウ(感冒のときよく使います)です。

ただし、長く飲み続ける薬ではないですし、1週間飲んでも効き目がなければ別な薬に変更すべきでしょう。カッコンとは葛(クズ)のことですから、古人が葛湯を肩こりのとき飲んでいたのは経験的な知恵なんですね。また、御自分で横になって臍のすぐ左横を人指し指で押して軽く痛みがあれば、カッコントウが効く目安になります。

慢性の肩こりの場合は、いつもお話するように証(身体の状態)の見極めが大切になります。漢方医学の診察で「望・聞・問・切」という四診というのがあるのですが、何の事はない「望診」は目でみる(顔色・舌・皮膚・体の動き・精神状態)、「問診」は耳から聞く、においを嗅ぐ(声、体臭、咳、口臭)、「問診」は西洋医学と同じ、「切診」は体に触れて診ることなのです。

しかし、「望・聞」だけでも結構な情報は得られるんですね。同じ患者さんを診ていると、「今日は顔の色つやがいい」とか「声にハリがある」とか分かるんです。以前、「顔の色がいい」と患者に言うと「今日は化粧してきたんです」と言われましたが、要は化粧する位に身体の気力が充実してきた証拠でもあるのです。(笑)

肩こりにばかりに気を取られると、正しい治療ができなくなります。「冷え」「頭痛」「ストレス」などが伴っているかは非常に重要です。基本的には前回話した「お血(おけつ)」と「水毒」によるものが多くみられますが、一人一人に合わせた漢方薬が必要になります。