以前に東洋医学では消化吸収機能をつかさどる「脾(ひ)」というお話をしましたが、今回は「腎(じん)」の概念についてお話します。

「脾」と同様に「腎」も腎臓そのものを意味するものではありません。腎は生を受けたときにもつ本来のエネルギーを保持していますが、年齢とともにそのエネルギーは減っていきます。今話題になっているエイジング(加齢)は東洋医学的にはまさしく腎の衰え(「腎虚(じんきょ)」といいます)をさしています。

では、「腎虚」ではどのような症状が出現するのでしょうか?「尿が近い、または出にくい」「腰が痛い」「足腰に力が入らない」「精力減退」は代表的な症状ですが、「耳鳴り、めまい」「難聴」「むくみ」「かゆみ」「冷え」「手足のほてり」といった症状もあります。

なんで「耳」の症状?と思うでしょうが、東洋医学では「腎」は「耳」につながっているという解釈があります(腎臓が弱ったら耳もおかしくなるという意味ではありません)。「経絡(けいらく)」という考えがあるように人間の身体はインターネットのようにいろいろな部分と連絡し合っていて、こういう考え方は古来からありました。さて、今回の患者さんです。 

『64歳、Kさん、女性。最近、どうもおしっこが近くて泌尿器科を受診したが膀胱炎ではないといわれた。歳のせいか腰も痛いし…。夜なんか足がほてって眠れない。漢方薬でも試したいとのことで来院。』

Kさんを診た瞬間、「腎虚」かなと思いましたが、一応お腹を触り(腹診)証明することにしました。代表的なサインは「少腹不仁(ショウフクフジン)」といって、臍の下あたりに周りと比べて力がなくてヘニョッとした柔らかい部分があるかどうかです。

この方にはこのサインがありました。
腎を補う漢方薬として『六味丸(ロクミガン)』を処方しましたが、1ヶ月でとてもおしっこの調子が良く、夜ふとんから足を出さなくなったとのことでした。

さて、「腎虚」でなぜ「ほてり」が出現するのでしょうか?手足がほてると冷やせばいいと思いがちですが、ご高齢の方の「ほてり」の原因は「乾燥」によるものが意外と多いものです。つまり、潤してあげると改善する「ほてり」なのです。一度、大汗をかいたときに水を飲むのを我慢してみて下さい。この「ほてり」を実感できますよ(笑)。