前回は「腎虚(じんきょ)」のお話をして、『六味丸(ロクミガン)』という漢方薬を紹介しました(詳しくは前号を参照)。

腎を補う薬には、この仲間として『八味地黄丸(ハチミジオウガン)』『牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)』などもあります。これらの薬は『六味丸』にさらに他の生薬を足してできています。

では、どう使い分けるのでしょうか?「腎虚」は決して「腎臓が悪い」のとは違うという話は前回しましたし、下半身あたりに症状が出ることが多いこともお話しました。
「おしっこが最近近くなった」「腰もなんとなく痛い」…などは典型例でしたね。

もし、こういう方で「冷え」があったとしましょうか。「足の裏が冷えると、つま先がほてる」なんていうのは漢方医学的には不思議な症状ではありません。

その場合は、「冷え」を良くする生薬が含まれた漢方薬の方が良いにきまっています。つまり古人は『桂枝(ケイシ)』(シナモン)や『附子(ブシ)』(毒性のないトリカブト)の二種類の生薬を『六味丸』に足して『八味地黄丸』(6+2=8です)を造ったのです。また、「冷え」もあるけど「下半身のしびれ」もある方のために、それに対応した生薬をさらに加えて『牛車腎気丸』なる薬も造ってしまいました。

よく膝から下だけがむくんで、しびれて冷える方なんかいらっしゃいますが、こういう方は『牛車腎気丸』が効くタイプなのですね。「冷え」があるかないかを聴くのはとても大切で、「冷え」のない方に『八味地黄丸』や『牛車腎気丸』を処方したら、その方は熱くてたまらないでしょうね。「冷え」を診るには実際に触って診察するのが一番です。

「腎虚」は決して高齢の方だけの症状ではありません。若い方でも「腎の精」の不足は過労のように無茶をすると起こり得ます。ただし、高齢の方と違うのは、若い方は即効性があります。本当にびっくりする位に早く効いてしまいますね。

一般的に「腎虚」を治すには時間がかかると云われていますが、個人的には「ちょっと顔色が赤らんでいる」タイプには、どうも『八味地黄丸』がよく効く方が多い印象をもっています。『桂枝(ケイシ)』(シナモン)は「のぼせ」に効く生薬ですから、ここにカギがあるのでしょうか?