『30歳Aさん。5年前から花粉症となる。水様透明鼻汁が起床時から午前中によく出現し、入浴すると軽快する。寒い日には出現しやすく、咽頭痛や鼻閉はほとんどない。カゼはひきやすく、手足は冷えやすい。』

『36歳Bさん。1年前から花粉症。5月初旬より透明鼻汁が出現し、ときに黄色鼻汁となる。鼻汁時には顔面のほてりを伴う。夜間には鼻閉、くしゃみ、咽頭痛が出現。暑がり体質で、カゼもひきやすい。』

AさんとBさんはともに花粉症ですが、東洋医学的には別な身体の状態(証)です。「寒熱」という考え方で捉えると、Aさんは「寒証」で、Bさんは「熱証」タイプです。

Aさんには『小青竜湯(ショウセイリュウトウ)』を処方しましたが、1週間で鼻汁が止まりました。Aさんは、胃腸症状がなく、『小青竜湯』を飲むことができましたが、「麻黄(マオウ)」という生薬で胃腸障害を起こす人には『苓甘姜味辛夏仁湯(リョウカンキョウミシンゲニントウ)』に変更すると有効なことがあります。ちなみに「青竜」とは季節の神(四神)の一つで、春の神と同時に水の神でもあります。『小青竜湯』は肺に停滞した冷水を春の温かさで除く効能から命名されたものです。

Bさんは、暑がりという「熱証」でありながら、汗かきでカゼをひきやすい状態の方です。透明鼻汁は「寒証」の症状なのですが、他の症状は「熱証」なので、『清上防風湯(セイジョウボウフウトウ)』を投与して効果を得ることができました。黄色鼻汁が多く、鼻閉が強ければ、『辛夷清肺湯(シンイセイハイトウ)』も良いかもしれません。

古典にも「鼻きゅう(ビキュウ)」という言葉が残されており、外邪によって透明鼻汁・鼻閉・鼻腔掻痒感・くしゃみなどが突然にかつ反復性に出現する病態と記されています。

現代でいうアレルギー性鼻炎・花粉症などの季節性アレルギー疾患に相当するものが昔から存在していたのです。古人も悩ませた疾患と受け止めると、少しばかり親近感が沸きますね。