『40歳Nさん。数か月前から手指の関節痛を感じるようになり、他院にて関節リウマチではないとの診断。漢方薬を試してみたいとの事で来院。』

 Nさんには、最初は『薏苡仁湯(ヨクイニントウ)』(ハトムギが生薬として含まれています)を、次に『防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)』を処方いたしましたが、関節痛は全く消えず、鎮痛剤を併用するに至って1年ほど経過して、朝方に手指の屈伸で痛むが後は気にならない程度のようでした。

しかしながら、その頃から足底部の痛みを訴えるようになり、朝起床時の数歩が特に痛むとの事でしたので、以前からの『防已黄耆湯』に痛みを取るために『附子(ブシ)』(トリカブトを無毒化したもの)を加えてみました。痛まない日もありましたが、カゼで発熱したときは両手の小関節が全部痛むという事もありました。しかし、関節が腫れたりするような所見は一切ありませんでした。

 ある日、めずらしく?全身倦怠感を訴えて薬を取りに来院したときに、最近肥満気味(元々だと思うのですが…)というので、便秘は無かったのですが、『防已黄耆湯』を『防風通聖散(ボウフウツウショウサン)』(巷では「痩せ薬」と称されている。本当はそうではないのですが…詳細は以前の号参照)に変えて二週間だけ飲んでもらうことにしました。

こちらに変えたところ、「飲むと30分もすると尿意が起きて、顔や手足がスッキリして、顔や手足の痛みが軽くなる感じがする。」との事でしたので、本人も鎮痛剤を飲まなくなりました。

 鎮痛剤を止めて最初の一か月間余りは、痛みを訴えることもありましたが、その後は少なくなったようです。残念ながら体重の増加の歯止めにはなりませんでしたが、その後は便通も良く、体調は一層良くなり、手足の痛みを訴えることがなくなったとの事です。

 Nさんのように、『防風通聖散』が利尿効果を発揮して、結果として難治な痛みを鎮めた例は実は漢方の古典にも記載があります。痛みに対して最初から『防風通聖散』を処方することはほとんどありませんが、今回の症例を通じて、「木をみて森をみず」の治療ではいけないと反省させられました。