『77歳Sさん。歩行時に左膝の痛みを自覚するようになり、徐々に痛みが悪化してきたため、整形外科を受診し、膝関節症の診断を受けた。友人に漢方薬が良いのでは?と勧められて当院に来院。』

当院は整形外科ではないので専門外来を継続して受診することをお勧めしましたが、何か漢方薬を試したいとの強い要望で診せていただきました。

左膝の内側部を中心に痛み・腫れ・熱感を認め、風呂などで温めると痛みが軽くなるようでした。

暑がりの寒がりで、冬場は腰から下の冷えを自覚するとの事。お腹はガマガエルの様(失礼!)で、皮膚はしっとりと湿っていて、口の渇きも訴えていました。

舌を拝見すると歯型の痕がしっかりありましたので、「水毒(水分のバランス異常)」と解釈して『防己黄耆湯(ボウイオウギトウ)』を飲んでもらいました。

 2週間後、「痛みがとれた。動かしたときに痛みは少しあるが、気にならない。」左膝に触れてみると、張れがたしかにひいていましたが、熱感はまだありました。

しかしながら、自覚症状が良くなっているので、続けて飲んでもらうことにして1ヶ月後、「かなり歩けるけど、明け方冷えると膝が痛む。」というので、『附子(ブシ)』(温める・痛みをとる)を追加して飲んでもらいました。

1ヵ月後、「朝方足がポカポカして、膝の痛みも無くなった。ただ、最近すこし動悸がする。」この動悸は『附子』の軽い副作用なので高齢の方には注意しなければいけません。

『附子』は一度中止し、『防己黄耆湯』はそのまま飲んでもらっていますが、2年経過した現在、「雨降り前の頭痛が最近無くなった。」との事でした。

 「雨降り前の頭痛」は以前に低気圧が近づくと頭痛がする症例でもお話ししましたが、『五苓散(ゴレイサン)』という「水毒」の漢方薬がよく使われますが、Sさんも「水毒」に起因した膝の痛みでしたので、同時に「雨降り前の頭痛」も改善したのだと思われます。

こういう効き方は漢方薬ならではのもので、いつも生薬の妙に感心させられますね。