体力の低下した高齢者における頻尿は、泌尿器の疾患に関係するものが多いですが、東洋医学的にはいろいろな要素が複雑に絡み合っておこる病態の一つです。

最近の報告では、「過活動膀胱」という膀胱に尿を溜める機能障害のため、尿が溜まるときに膀胱が勝手に収縮してしまい、「尿がしたい感じが多い・何度もおしっこをする・トイレに着くまで我慢できずに尿失禁してしまう」という症状に対して『牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)』が有効である報告がされており、西洋医学的治療のみでは困難な症例にも期待されています。

『牛車腎気丸』は特に高齢者の泌尿器・生殖器の機能低下に伴う排尿障害、腰や下肢のしびれ・脱力感・痛みに用いることが多いのですが、個人的には、この漢方薬に加えて『補中益気湯(ホチュウエッキトウ)』を併用することがよくあります。

 『補中益気湯』には「補気(気を補う)」「ものを挙げる」作用もあり、高齢女性で子宮下垂に伴う膀胱下垂による尿失禁に対して『牛車腎気丸』との併用は大変有効です。

この2種類の漢方薬を用いた方全般にいえることは、「生活の質の改善」です。

このような症状のある方は「生活の質の低下」が著明に認められるのですが、これは加齢による元気不足に加え、症状の不快感やとりわけ尿失禁に関しては他人に相談できないストレスにも起因すると思われます。

つまり、「気うつ」「気虚」(詳細は既刊号)の「気」の異常が大いに関与しているものと推測されます。

高齢女性の難治性の頻尿には尿失禁を伴っていることが多々あり、現代の西洋医学的治療のみでは困難な局面も稀ではありませんし、今後は高齢化社会においてさらに増加するでしょう。

漢方薬は生薬の複合剤ですから、一つの症状の改善のみならず、他に「気剤」として作用し、生活力を向上させる意味でもユニークでかつ有用な治療手段と思われます。