『71歳0さん。最近皮膚がカサカサして乾燥する感じがあり、だんだんと身体に痒みを覚えるようになり、性器の周辺も痒いとの事で来院。本人曰く、皮膚科で老人性皮膚炎といわれて軟膏を塗っていたが、ちょっとはいいけどあまり効かない。年のせいだから仕方ないのかねーという話。』

加齢に伴う変化の一つに「潤」から「燥」への変化があります。お年寄りの皮膚はごわごわと乾燥して皺だらけであることは誰もがよく知っていますね。0さんの日焼けした顔は一見元気そうに見えますが、皮膚が全体的にカサカサして潤いがありません。口内も乾燥していて、舌には厚く乾いた苔がベットリと付いていました。

このような方を漢方で治療するときには、「薬で痒みを無理やり抑え込む」のではなく、「乾燥した皮膚を潤すことで、みずみずしい皮膚に戻す」ということを考えます。0さんには『当帰飲子(トウキインシ)』を処方しました。二週間後、「痒くて眠れなかったのがおかげでぐっすり眠れるようになった。」との事で、もう二週間続けてもらったところ、「最近皮膚がしっとりして、艶がでてきたよ。先生、これは若返りの漢方薬かい?」とおっしゃっていました。

乾燥するといっても皮膚だけではありませんね。
身体のどこの部分が乾燥するかによって、現れる症状も用いる漢方薬も変わってきます。

例えば、のどの奥が乾燥してカラカラになると、特に夜間に空咳が出るようになり、布団に入ると咳き込んで眠れないことを訴える方もいます。これも高齢者にときどき見られる症状で、これにはのどを中心に潤してくれる『滋陰降火湯(ジインコウカトウ)』という漢方薬がよく効きます。

腸が乾燥する(あまり適切な表現ではないですが)と、便がちょうどウサギの糞のようにコロコロと硬くなってしまいます。こういうときも漢方医学では「腸を潤して便に湿り気を与える」考え方で、『麻子仁丸(マシニンガン)』という薬をよく使い、便がつるっと気持ちよく出ることを目標にします。

このように、「乾いているものを潤す」という考え方はとても大切で、特に高齢者にはこの考えで上手く漢方薬を使用すると症状が軽快して大変喜ばれることがよくあります