『48歳専業主婦Cさん。更年期障害に伴い、動悸や疲れやすいなど症状に対して当院で『柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)』を処方しており、比較的良好な状態であった方で、最近1ヶ月前頃から不眠(寝つきはよいが、音に敏感で眠りが浅い)となり、疲れがひどくなったと訴えて来院。』
 Cさんには、『柴胡桂枝乾姜湯』を飲まないと動悸が起こるため、そのまま継続してもらい、『補中益気湯(ホチュウエッキトウ)』を寝る前に服用してもらいました。4週間後には、「よく眠れて目覚めもよい。最近疲れにくくなった。」との事。その後も継続してもらい、不眠の訴えは今のところありません。

 『51歳会社員Dさん。ほてりなどの更年期障害に対して、『温経湯(ウンケイトウ)』を服用して、症状が落ち着いていた方で、夏場を過ぎてからだるさを感じ、最近やる気がなく、日中はすぐに横になりたくなるが、夜は眠りが浅く、よく眠れないと訴えて当院に来院。』
 Dさんは「すぐ横になりたくなる」ことに加え、「食後の過度の眠気」や「寝汗」があるため、「気虚(キキョ)」(詳細は以前号)の状態が顕著ととらえて、『補中益気湯』を併用で一日3回服用してもらいました。4週間後、「よく眠れるようになった。朝、すっきり起きることができて、だるさがなく、やる気もでてきた。」との事。

 不眠を主訴の方に、いきなり『補中益気湯』を処方することはあまりありません。(「不眠と漢方薬」に関しては以前号参照ください。) 『補中益気湯』は、基本的には「気虚」を治す漢方薬です。『補中益気湯』によって、不眠が改善した場合には「気虚」の改善によって日中の活動性が高まり、その結果として入眠しやすくなったり、睡眠が深くなったり、朝の目覚めが良くなるといった2次的な効果があると思われます。実際にDさんでは、やる気や気分など精神的側面での改善がみられており、日中の活動性が向上しました。

 『補中益気湯』は、急性・慢性疲労でよく処方される漢方薬ですが、最近では抗がん剤や放射線治療などの副作用にも用いられています。「不眠」の場合でも「気虚」が顕著な場合には、有効なことがありますので、漢方薬で解消したい方は一度試されるとよいのではないでしょうか。