漢方治療のすべてにおいて、便秘に対する考え方は重要です。便秘を改善することが、東洋医学的に「証(ショウ)」(身体の状態)を改善することにつながるからです。便秘に効く西洋薬には、塩類下剤と刺激性下剤があり、頑固な便秘でも後者を用いればたいてい解消されますが、効果が強い分、腸の刺激性も強いのでお腹が痛くなる場合も多く、高齢者の方にはむしろ前者の方が適しています。しかしながら、こちらは体にやさしいものの、効果が弱いのが難点です。

 漢方薬の下剤の基本は「大黄(ダイオウ)」という生薬で、これが含まれている『大黄甘草湯(ダイオウカンゾウトウ)』は比較的弱い下剤なので、中等症以下の便秘に用いられます。これに「芒硝(ボウショウ)」を加えたものが『調胃承気湯(チョウイジョウキトウ)』で、やや切れ味がよくなります。「芒硝」の量をさらに増やして効果を強めたものが『大承気湯(ダイジョウキトウ)』になります。

 これらの薬でかえって腹痛を感じるだけで快便感につながらない場合は、『桂枝加芍薬大黄湯(ケイシカシャクヤクダイオウトウ)』『麻子仁丸(マシニンガン)』『潤腸湯(ジュンチョウトウ)』などを使います。これらには「大黄」が入っていますが、あまりお腹が痛くなりません。

 これでもお腹が痛くなるときは「大黄」がない『桂枝加芍薬湯(ケイシカシャクヤクトウ)』『小建中湯(ショウケンチュウトウ)』『柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)』などを使います。

 高齢者の場合は、便の水分が減って便が硬くなる以外に、便を押し出すための腸の運動も弱くなるので、『麻子仁丸(マシニンガン)』『潤腸湯(ジュンチョウトウ)』が適しています。

 便秘を漢方薬で治すと、本人が気付いていなかったいろいろな症状が楽になることがしばしばあります。頭の重だるさ、肩こり、冷え、腰の重さ、倦怠感、生理痛、ニキビなど本当にいろいろと治ります。西洋薬の下剤ではお腹が痛くなって、とても不快だという方は結構いらっしゃいますが、便秘も立派な病気と認識して、一度漢方薬をお試しになってもよろしいかもしれません。