副鼻腔炎(一般的にいう蓄膿症)の原因にはいろいろありますが、急性期は抗生剤を併用した方が無難でしょう。しかしながら、薬物アレルギーや副鼻腔炎による合併症がある場合は漢方治療を選択されるのも一つの手段と思われます。

 具体的には、漢方生薬で抗生物質的な作用をもつ「荊芥(ケイガイ)」「連翹(レンギョウ)」などが含まれた漢方薬を使用します。副鼻腔炎の急性期(初期~1週間位)には『葛根湯加川芎辛夷(カッコントウカセンキュウシンイ)』+『十味敗毒湯(ジュウミハイドクトウ)』、亜急性期(1~3週間位)には『辛夷清肺湯(シンイセイハイトウ)』+『荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ)』、慢性期・鼻閉・鼻茸(慢性的副鼻腔炎に付随する一つの病状で、別名鼻ポリープとも呼ばれています)には『辛夷清肺湯』+『桂枝茯苓丸加薏苡仁(ケイシブクリョウガンカヨクイニン)』を推奨している先生もいらっしゃいます。次に症例を提示いたします。

 『症例…59歳女性。元々、アレルギー性鼻炎が10年以上あり、数か月前に副鼻腔炎にて耳鼻科で治療を終えたばかりだが、鼻閉・膿鼻汁がひどく漢方治療を希望して来院。目も痒く、まぶたの腫れも張れている状態であった。』

 まず、アレルギー性鼻炎・結膜炎・副鼻腔炎の治療として、『小青竜湯(ショウセイリュウトウ)』と『辛夷清肺湯』を処方しましたが、内服1週間後に胃もたれと排尿時の不快感が出現したため(恐らくは『小青竜湯』に含まれている「麻黄(マオウ)」の副作用と思われます)に、他の症状も参考にして(これが漢方治療のミソですが…)『四逆散(シギャクサン)』と『桂枝茯苓丸加薏苡仁』に変えてみました。その後、症状はかなり楽になり、内服継続中です。

 副鼻腔炎になって、経過が長く体力が弱っている場合は『補中益気湯(ホチュウエッキトウ)』を、さらに体力が衰弱している場合には『人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ)』や『香蘇散(コウソサン)』を加えたりします。

 副鼻腔炎の治療は西洋医学・東洋医学にそれぞれ優れるところがあります。両者をうまく併用することで患者さんがその恩恵を受けるのであれば、積極的に使い分けるべきだと思います。

 ちなみに副鼻腔炎で臭いが分からなくなった場合、西洋医学では結構難渋するようですが、漢方には古典によると「香臭を聞かざる場合」の適応処方もあり(煎じ薬しかありません)、使用経験のある医師の話では有効率は7割だそうです。