『40歳Nさん。最近、知人に勧められ水を多く飲むようになった。 元々やせ型で冷え性だが、夏に入り夏バテ気味なので、栄養をつけようと この1週間スイカなどの果物を連日食べ、昨日はかき氷を食べたところ、 胃がつまった感じで苦しくなり、シクシク痛むようになり、内科で以前 もらった薬を飲んだが、効果が今一つで来院時についでに?漢方薬を希望。』

Nさんの場合、元々冷え性で胃弱の人が冷たい物を摂り過ぎた結果、 漢方医学でいう「胃寒証」の状態と思われたので、こういう場合の第一選択 薬である「人参湯(ニンジントウ)』を処方しました。結果は一週間で症状で 改善したようでした。

最近は、血栓予防のため水をいっぱい飲むことを推奨し、体質に関係なく ドンドン水分を採る人が増えてきました。漢方医学的には「熱症」または 多血症傾向にあれば、ラジエーターの役割として水を多く採ることは理に かなっていますが、「虚症」タイプ(詳しくは以前の号)で冷え性の人の 場合はどうでしょうか?

冷え性で悩む方は一年を通じて絶えないようですが、特に夏場は体温を超える 暑い戸外と冷房の効きすぎた室内などの激しい温度差、冷たい飲み物の摂り 過ぎ、暑い夜の睡眠不足などの外的要因によって体温の調節をしている 自律神経がバランスを崩し、冷え性になる人が多くなりがちです。

冷たい物を摂取したことによる胃腸障害には『人参湯』『六君子湯 (リックンシトウ)』などの「人参」を含む漢方薬が有効ですし、 クーラー病として冷えなどには『当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)』 『五積散(ゴシャクサン)』など用いられます。

現代人は外の暑さから身を守る知恵と技術を持ち、外に対しては より涼しい場所へ、最終的にはクーラーの効いた部屋で過ごし、内に 対しては身体の芯を冷やすために冷たい物を多く採るようになり、 その結果として、夏なのに「冷え」という病態が特に「虚証」傾向の 人には起こりやすくなります。

体質に合わせた避暑法を取りたいものですが、私自身「虚証」タイプでは ありませんが、クーラーの効いた部屋でアイスキャンディーを2本食べた 後は、こっそり『人参湯』を一包飲んでいます(笑)。