女性の場合、心身に生じている複数の症状を訴えて医療機関を受診しても、検査値に異常がみられないと「更年期障害」「自律神経失調症」と勝手に診断されるケースはよくあります。これらの言葉は医者にとっては都合の良い言葉です。なぜ多彩な症状がでているかわからなくても、一応もっともらしく患者さんに告げると、患者さんも何となく納得するという不可思議な流れができてしまいます。漢方薬はこのような多愁訴に対しても使用する際にいくつかのポイントがあります。今回はそのいくつかを紹介いたします。


①『炙甘草湯(シャカンゾウトウ)』
 循環器科で異常は認められていないけれども、心臓がドキドキしたり、息切れするといった症状が強い人に適しています。血液の流れを調整したり、不整脈を改善するとともに、精神の安定にも関わる生薬が配合されています。

②『桂枝加竜骨牡蠣湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)』
 神経衰弱・神経過敏状態、興奮しやすいといった症状に効果があり、特に神経質な人、自信を喪失している人、顔色の悪い人、性欲が減退している人などに適しています。漢方薬の「向精神薬」といったイメージです。

③『柴胡加竜骨牡蠣湯(サイコカリュウコツボレイトウ)』
 不安が強く、ドキドキ・イライラ、悶々といった症状が前面にでている人に適しています。血圧を下げたり、精神を安定させたりするのにも役立ちます。男性にもよく使われ、便秘にも効きます。

④『女神散(ニョシンサン)』
 女性ホルモンの調整や精神安定に役立ちますが、どちらかというと「しっかり者の女性」に適しています。そのような人が、のぼせ・めまい・耳鳴り・頭痛・肩こり・精神不安定といった症状がある場合は試してみたい薬です。特に妊娠中・産後・更年期といった女性ホルモンに関わる局面での多彩な症状に有効です。

⑤『半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)』
 とにかく喉に何かひっかかっている感じが気になって仕方がない人にお勧めです。このタイプの人は「メモを取って症状を書き留めておく」ような几帳面な人が多いです。咳や嚥下反射の改善とともに喉の炎症や不安感を鎮める効果があるので、上気道炎になった場合にも有効です。