女性の場合、心身に生じている複数の症状を訴えて医療機関を受診しても、検査値に異常がみられないと「更年期障害」「自律神経失調症」と勝手に診断されるケースはよくあります。これらの言葉は医者にとっては都合の良い言葉です。

なぜ、多彩な症状がでているかわからなくても、一応もっともらしく患者さんに告げると、患者さんも何となく納得するという不可思議な流れができてしまいます。漢方薬はこのような多愁訴に対しても使用する際にいくつかのポイントがあります。今回は前回の①~⑤に引き続きそのいくつかを紹介いたします。


⑥『三黄瀉心湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)』
 動悸を訴え、気になって日常生活に支障をきたすような人で、そのために夜も眠れない場合に、さしあたり動悸を鎮めるのに有効です。比較的即効性があり、一包服用すると10分ほどでドキドキ感は治まります。その後、じっくり飲んで動悸がおこらないようにするには前号で紹介した『炙甘草湯(シャカンゾウトウ)』が適しています。動悸を訴えられる患者さんは循環器科を受診されて、「心配しなくても大丈夫です」といわれ、薬が出ないこともしばしばです。薬が出されても、精神安定剤が処方される程度が多いです。現代医学では、命にかかわらない症状にはあまり関心がない場合が多いのですが、本人にとっては非常に気になる症状です。もともと動悸が単独で起こるのは、精神的な要因が関係していることも多いので、不安が募るとそれがまた動悸を誘発するという悪循環に陥ります。


⑦『五苓散(ゴレイサン)』
 耳鼻科や脳神経外科を受診しても原因が明らかにされない「めまい」で悩まされる人に試してもらいたい漢方薬の一つです。この漢方薬には、最近の研究で耳の奥の内耳あたりの浮腫(むくみ)を改善するはたらきがあると考えられています。こちらも即効性があり、二包飲んでもらうと二時間位でめまいがとれる人もいらっしゃいます。また、乗り物酔いにも有効なことが多く、車に乗る30分から一時間前に一包飲んでおくと症状が抑えられ、抗ヒスタミン薬のような強烈な眠気が来ることもないので、ドライブを存分に楽しめます。乗り物酔いに悩まれている人は一度試されてもよろしいかと思います。