嘔吐と下痢あるいはそのいずれかを訴えて救急外来を受診する機会も増えてきました。その多くは軽症の感染性胃腸炎で、ウイルス性胃腸炎が最も多くを占めます。ウイルス性胃腸炎や消化不良、水分の摂取過剰による下痢や嘔吐の場合には抗生剤は使用しませんが、中等度以上の脱水に必要に応じて輸液を行います。

 漢方治療で下痢や嘔吐に最も使用されているのは幾度となく紹介している『五苓散(ゴレイサン)』です。喉の渇きを訴える患者さんには特に有効です。当院は小児科も併設しており、乳幼児には『五苓散』を水に溶かして肛門から直腸の中に注入したり、坐剤にして使用したりしています。『五苓散』は特に冬場の症状に有効です。効きが悪い場合や発症して数日経過して症状が改善しない場合には『五苓散』に『小柴胡湯(ショウサイコトウ)』を加えた『柴苓湯(サイレイトウ)』を用いたりします。

 重症の脱水になると、口渇もなくなり、水様下痢とともに手足が冷えてくる場合があります。このような場合には輸液と同時に『真武湯(シンブトウ)』を服用させると効果的です。同様の症状で嘔気・嘔吐もひどい場合には『人参湯(ニンジントウ)』を併用したりもします。いずれにせよ、体力が消耗しきっているときこそ、輸液だけでなく、漢方薬の併用はかなり有効と実感しています。

 最近、漢方薬の講演会でウイルス性胃腸炎に『桂枝人参湯(ケイシニンジントウ)』がかなりの即効性があるとのお話がありました。使用法は1回目は2包で、以後1時間ごとに治るまで1包ずつ内服を続けるという手法です。ノロウイルスの場合ですと、100個以下のウイルス数で感染し、あっという間に感染が拡大してしまう状況ですので、それを抑え込むための服用の継続なのでしょう。その講演会の先生曰く、患者が途中で眠ってしまえば、効果は出ている(?)との事でした。

 私自身も『五苓散』と『桂枝人参湯』の併用は好んでよく使います。特に嘔気が強いときは「人参」が含まれた漢方薬を選択すると良い感じはします。