女性は通常40歳を過ぎた頃から卵巣機能が低下し始め、50歳前後で閉経に至るのが大半です。卵巣からの女性ホルモンの分泌が急激に減少するため、閉経の数年前から閉経後数年間の間にかけてさまざまな不定愁訴としていわゆる更年期症候群が出現します。また、更年期には子供の独立、夫の定年、身体の衰えに対する不安など、多くの喪失体験やストレスに直面しやすく、心理社会的要因が更年期症状の増悪に関係していると考えられています。

更年期女性の42~52%が不眠との報告があり、更年期の患者さんには入眠困難・中途覚醒(特にほてり・のぼせによる)が多いのも特徴です。更年期には、ささいなことが気になる傾向があるので、睡眠へのこだわりが強く、不眠の恐怖により症状が慢性化し、精神生理性不眠へと移行することもあるようです。特にこのような場合には更年期障害の治療も併せて行う方が有効です。

西洋医学的には、不眠症は入眠障害や中途覚醒・早朝覚醒に加えて神経症的傾向を踏まえて睡眠導入薬や抗不安薬が選択されますが、漢方医学的には睡眠障害は以下のように考えて対応します。

  1. 不安、不眠、決断できない、驚きやすいタイプ…疲れすぎて眠れないときに『酸棗仁湯(サンソウニントウ)』、より鎮静効果を期待するときに『加味帰脾湯(カミキヒトウ)』など
  2. イライラが主体のタイプ…『抑肝散(ヨクカンサン)』『抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)』など
  3. 悪夢をよくみるタイプ…『柴胡加竜骨牡蠣湯(サイコカリュウコツボレイトウ)』『桂枝加竜骨牡蠣湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)』など
  4. 疲労が中心であるタイプ…『補中益気湯(ホチュウエッキトウ)』『黄耆建中湯(オウギケンチュウトウ)』など

睡眠障害は、心身のバランスが崩れることによって引き起こされることが多く、この点を改善する意味では、漢方薬を併用することにより、睡眠薬の減量や睡眠の質の向上などにも役立つと思われます。