『14歳Aさん。小学6年生のころから朝起きにくくなった。近医にて起立性調節障害(以下ODと略)と診断され、内服薬(ミドドリン塩酸塩)などで軽快したことがあるものの、その後頭痛・倦怠感にて他院で『補中益気湯(ホチュウエッキトウ)』を処方され症状は一時改善した。中学1年の夏休み前から、朝起きられず登校できなくなり、ミドドリン塩酸塩と『小建中湯(ショウケンチュウトウ)』を処方されたが、改善されず当院に来院。』

ODは思春期初期にみられる自律神経失調症とされ、不登校の原因の一つにもなっています。起立時の血圧低下にはミドドリン塩酸塩などの昇圧剤がよく用いられますが、動悸などの副作用のため治療困難な例は少なくありません。

 Aさんの症状で「口渇、立ちくらみ、心下部振水音(みぞおちのあたりを揺らすとポチャポチャと音がする状態)」は「水毒」、「疲れやすい、身体が「だるい、体が重い、食欲がない」は「気虚」と漢方医学的にとらえらえましたが、「朝起きられない」症状をODとみるか、うつ症状とみるかが問題でした。気分の抑うつなどは明らかでなかったため、基本病態を「気虚」ではなく「水毒」とみて『苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)』を処方しました。

 二週間後、「朝起きやすくなり、学校へは週2回午前中行けるようになった。」との事。頭痛がひどいときには『五苓散(ゴレイサン)』を併用してもらいました。4週間後、「午前中は毎日登校できた。」母親がかわりに来院したので追加処方し、良くなれば廃薬としました。

 「朝起きられない」という主訴に対しては、うつ症状との鑑別が重要になります。Aさんの場合には明らかな精神症状や学校でのいじめなどのエピソードを認めなかったのでODを主とした病態を考えました。もしメンタルヘルス的不調が主となる場合であれば、「気虚」に対しては『補中益気湯』『六君子湯(リックンシトウ)』が有効でしょうが、ODに類似したうつ症状に対する効果は期待しがたいと思われます。

 今回の「朝起きられない」原因を精神面・身体面のいずれに求めるかは他の症状と合わせた総合的な判断が必要です。