今回は前回に引き続き「浮腫」いわゆる「むくみ」に関してお話します。「むくみ」は東洋医学では「水毒(スイドク)」という体内の水分の偏在として解釈し、その原因が「気」「血(ケツ)」の異常や「水」をコントロールしている「腎」「脾」「肺」の機能異常ととらえて処方が決定することは前回述べました。

 飲食物から得られる水分は「脾」(消化機能をつかさどる)で吸収されますが、この機能が弱いかもしくは低下すると、「水」の動きが鈍くなり、「むくみ」となってきます。このタイプの方は昔から疲れやすく、あまり食欲旺盛でなく、便は軟らかく、便秘をしたことがないことが多く、「むくみ」のせいか手足が重だるく感じることがよくあります。特徴的なのは舌を診ると、色は白っぽく、表面に白い苔がべったりと付いている点です。この場合に使用する代表的な漢方薬は『六君子湯(リックンシトウ)』で、胃腸の機能を高めて余分な水分を取り除く作用があります。食べ過ぎ・飲み過ぎで悪化した場合には、これに『五苓散(ゴレイサン)』をさらに加えたりします。「気滞」(「気」の流れの停滞)により感情の抑うつ、イライラ、お腹にガスがたまるという症状も同時にある場合には『胃苓湯(イレイトウ)』を、また下肢の浮腫が起こる場合には、『補中益気湯(ホチュウエッキトウ)』+『五苓散』が有効です。

 全身的な「気滞」による浮腫には『九味檳樃湯(クミビンロウトウ)』が有効とされています。この漢方薬は「大黄」が含まれていて便秘があれば一層よい選択となります。「大黄」が「水」を動かすという点で用いる独特の処方です。

 女性の月経周期に伴う浮腫は「瘀血(オケツ)」(血液の循環不全)に関連した場合が多く、『当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)』がよく使用されます。

 慢性的なむくみには、前回お話したように『五苓散』などの「利水作用」のある漢方薬よって停滞する水分を正常に流れるようにする必要があります。体内に余っている水分があると、最初のうちは尿が多く排出されますが、漢方薬の場合は西洋の利尿薬と異なり、体内の水分のバランスがとれてくると、尿量は正常になります。ちょうど水量を調節するダムに似ています。よく患者さんが「おしっこが最初たくさん出ましたが、今はそれほどでもないです。」とおっしゃるのはこの理屈です。