今回は『白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)』についてお話します。「白虎」とは秋をもたらす神の名です。 この漢方薬には、鉱物の「石膏」が使用され重要な役割りをはたしています。「石膏」は白い色でギブスや石膏像で おなじみですが、漢方薬としては身体にこもった熱を冷ます働きがあります。『白虎加人参湯』は熱中症に使われる 漢方薬として有名ですが、熱中症のみならず「口渇」や「身体のほてり」のある症状にも全般的に有効です。

口渇をきたす疾患は心因性のものが多い傾向がありますが、シェーグレン症候群などの口内乾燥症や薬剤性の口渇にも 有効なことがあります。また、糖尿病性の口渇にもよいのですが、原疾患の治療が最優先であることは言うまでもありません。 ほてりや発汗では、更年期症状のそれにも効果がみられます。私自身の経験では、ほてりのために不眠になった方に 何度か用いて有効だった症例があります。また、皮膚の熱感を抑えるので、アトピー性皮膚炎にも用いることもあります。

有名な詩人北原白秋の名前のように、白色は秋を象徴する色です。実は『白虎加人参湯』は秋をイメージし 象徴した薬なのです。つまり暑さのために火照った体を、秋の涼しさのようにさわやかにする働きからの命名で あります。『白虎加人参湯』は体の熱感やほてり、発汗、口の渇き、頭痛といった熱中症特有の症状が出現した 時によく使用されますが、ペットボトルなどに溶かして少しずつ飲用すると熱中症の予防にもなります。

いずれにせよ、『白虎加人参湯』は発汗しているもの・熱(熱感)のあるものに有効です。舌を診る場合には、 舌が赤く、乾燥しているのが使用目標の特徴です。アトピー性皮膚炎の中でも皮膚の赤みが強く、熱をもっている 状態の場合には『黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)』(清熱作用が強い)と組み合わせて用いるとさらに効果が 高まり、私は皮膚炎の漢方治療の初期にこの組み合わせを用いることがあります。『黄連解毒湯』はもっぱら熱を 取る薬であるのに対し『白虎加人参湯』は潤いをもたらす作用があります。ですから、乾燥しているときや脱水に 近い状態に有効なのです。