今回は『呉茱萸湯(ゴシュユトウ)』という漢方薬をご紹介いたします。以前に頭痛の症例でご紹介した漢方薬ですが、使用目標としては発作性にくる嘔気や嘔吐がある激しい頭痛に用いられ、特に片頭痛に頻用されます。また、発作の起こる時に痛む側の項(うなじ)から耳たぶの後ろにかけて凝るといった場合にも有効です。

 発作の時にみぞおちの辺りの膨満感があり、「胃がつまったようだ」と訴える場合が多いタイプや、足がひどく冷えるタイプにも『呉茱萸湯』を用いる目標になります。またこのような頭痛を抱えている人の中には、「じっと安静にしていられず、起きたり寝たりして苦悶する」傾向がある人もいます。

 従来、『呉茱萸湯』は片頭痛に頻用されていましたが、肩こりのみで頭痛がない例や、生理痛がひどい月経困難症にも頓服で鎮静剤のように用いることもあり、特に生理痛と頭痛が同時にある人には有効です。

 また、虚証タイプ(体格が比較的華奢な人)の「しゃっくり」にも使うことがあるようですが、私には使用経験がありません。漢方薬の大家でいらっしゃる松田先生の症例ですが、朝からしゃっくりが止まらないといって来院された人に、『呉茱萸湯』をコーラで服用してもらい、ゲップを我慢してもらったところ、間もなく止まったそうです。その後、本人は「コーラでしゃっくりが止まった」と思い、再発したときに自分でコーラのみで試したところ無効で、やはり薬を併用してまた止まったとの事でした。

 実証タイプ(体格が比較的しっかりしている人)の「しゃっくり」には『半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)』が有効で、古くはその類似処方で吉田茂首相を漢方薬で治した馬場先生という方がいらっしゃいます。

 『呉茱萸湯』は、このように様々なケースで使用されますが、先に述べたお腹の症状や冷えも重要な使用目標となりますので、参考にされるとよろしいかと思います。頭痛の場合に『呉茱萸湯』が有効であれば、発作は起きなくなりますが、できれば少なくとも2、3か月は服用を続けたほうがよろしいでしょう。