「良薬は口に苦し」という孔子の名言がありますが、特に漢方薬は苦くて飲みにくいという 印象を持っている方は多いとおもいます。

以前に子供の「寝冷え」に対する漢方薬で味を本人に飲んでもらってその場でお薬を決める 方法を試みている先生(大阪の開業医)のお話を思い出しましたのでご紹介いたします。

 親子で来られて、本人が「漢方薬なんか飲めるわけないやん」というのを『人参湯(ニンジン トウ)』をお湯に溶かしてスプーンで味見(テイスティングですね)してもらいました。 「あれ?これやったら飲めるわ」という反応で、次に『小建中湯(ショウケンチュウトウ)』 を試したところ、「飲めるけど、いまいひとつやな」(生意気な小学生ですね)との弁。 そこで先生は本人が飲みやすいという『人参湯』を処方して、寝冷えを数日で解消し、 「おなかがあったかい感じがする」との事でした。

 漢方薬の味に関する評判は、良く耳にします。『小建中湯』はうるち米から作った 「餡」が含まれていて甘みがあるので、比較的飲みやすい薬なのですが、逆に「甘くて 飲みにくい」ことがあったり、『黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)』という炎症を抑える 場合に使う薬は苦くて有名ですが、症状が強い方は子供でも意外とあっさり飲めたりもします。

 漢方薬には味にも薬効があることはいわれています。例えば酸味は粘膜などを収縮させたり しますし、苦味は乾燥させたり、下に降ろす作用があります。甘い物は「補う」働きが あるため、普段から摂取する必要や場合により身体のほうから要求してくることもあります。 苦い物は摂り過ぎると体内に必要なものを体外に排出してしまうので、苦い物をあまり 好まないのは自然の摂理にかなっているのでしょうか。ただし、病気になって体内の悪い物 を排出させるのに苦味のものが必要になることがあるのです。不思議なことに苦い物が必要に なときは意外と苦い物がそれほど苦でなくなりますし、普段甘い物が好きなのに逆に苦手に なるときもあります。そのときの証(身体の状態)により「味証」が変化するものなのでしょう。

 となりますと、孔子の「良薬は口に苦くて、病に利あり。」は「良薬は口に美味にして、病に 利あり。」が正しいのではないかと思ってしまいますね。