『26歳Nさん。2年前に妊娠浮腫があり、出産後肥満。左膝関節が腫れて痛みを伴い、 整形外科にて減量の指示が出る。ダイエットで痩せると疲れて(?)続かず。普段は ひどい汗かきで特に夏場は上半身滝のように汗が流れて、冷房車内でも一人で汗を かいている。階段の昇降ですぐ息切れし、風邪はひきやすく疲れやすい。外出帰宅後 はすぐに横になりたがる。154cm、82kgで、色白で水太り体系。肌は湿っている。』

この症例は講演会で提示されたものですが、Nさんには『防巳黄耆湯(ボウイオウギトウ)』 と『越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)』を合わせて処方し、一ヵ月後に膝の腫れ・疼痛は 減少し、二ヵ月後には体重の減少もみられ、五ヵ月後には膝の腫れ・疼痛は消失したとの 事でした。

また、腹部の圧通も取れて、風邪もひかず、疲れづらくなり、体重は結局15kgまで減量 できたそうようです。

『防巳黄耆湯』の使用目標は「色白で俗に水太りと称される体質の人」「疲れやすく汗が 多い傾向で下肢に浮腫があることが多い」「膝関節の腫脹疼痛」ですが、Nさんはまさしく ドンピシャリの症例です。『越婢加朮湯』は膝関節炎症状の強い場合によく併用されますが、 少量から使い、少しずつ増量していきます。

『防巳黄耆湯』に含まれる生薬の「黄耆(オウギ)」が用いられる徴候は漢方薬の古典には 「水太り肥満者で、多汗傾向や寝汗、手足がむくみやすい、朝手が握りにくい、皮膚や関節の 腫脹、疼痛、しびれ感などがあり、皮膚粘膜の水分が多くて、しぼれば水が出てきそうに見える 状態と記載されています。

講演会の症例の後日談として、Nさんは太った友人を2名を紹介してくれたそうです。本人たちは 痩せるのが目標で来院したようですが、一人は半年で体重が5kg減少し、もう一人は 不変だったようです。

講師の先生曰く「薬で痩せるのは無理なんですよ。漢方薬でも無理なものは無理です。」と おっしゃっていました。

以前に『防風通聖散(ボウフウツウショウサン)』が漢方薬の痩せ薬としてもてはやされましたが、 基本的には目的が違います。痩せても5kgの減少止まりが多いような気がします。やはり、体重を 減らすには食事と運動が一番かと思われます。