夏場が過ぎてどうも食欲がないということはよく耳にしますが、 食欲不振に関しても漢方薬は西洋薬にはない視点で捉えることが できます。食欲不振の漢方治療では、消化機能そのものが低下した 「脾虚(ヒキョ)」という概念がありますが、消化管の問題であっても 「気」の問題を考慮しながらの漢方薬の選択となります。

 「気」の異常では、「気虚」(「気」の減少・・・無気力、元気がない、 疲れやすい、日中から眠い)など)の場合には『六君子湯(リックンシトウ)』 『補中益気湯(ホチュウエッキトウ)』が、背景に「気逆」(「気」の上昇、 冷え、のぼせ、ほてり、頭部発汗、イライラ、発汗性の頭痛など)が疑われ れば、『黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)』が適応になります。風邪や 熱中症などの熱性疾患の後に食欲不振が出現した場合には『小柴胡湯(ショウ サイコトウ)』などの「柴胡」を含む漢方薬が有効です。「気うつ」(「気」 の滞り・・・不安感、憂うつ感、胃のつかえ感など)の状態がはっきりとある 場合には『平胃散(ヘイイサン)』『半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)』 『香蘇散(コウソサン)』が適応です。

 便秘と食欲不振が併発している場合には『大承気湯(ダイジョウキトウ)』 『三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)』を急性感染胃腸炎など急性の下痢 を併発している場合には『半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)』『五苓散(ゴレイサン)』 がよく用いられます。下痢が慢性的であり、「脾虚」の状態に陥った場合には 『人参湯(ニンジントウ)』といった「人参」を含む漢方薬が有効です。

 また妊娠悪阻(つわり)や抗がん剤を使用した場合で嘔気・嘔吐を伴う場合には 「小半夏加茯苓湯(ショウハンゲカブクリョウトウ)がよく用いれますが、 先に述べた状態であれば漢方薬を適宜変更または併用することになります。

 西洋薬ではいわゆる「胃薬」しかありませんが、食欲不振でもそれぞれの状態に したがった選択で漢方薬の効果が実感できることがあります。