心理的要因が関与して過換気発作を生じ、それに伴って様々な身体・精神症状を呈する症候群を「過換気症候群」といいます。精神疾患に合併することも多く、特にパニック障害との合併は多いといわれています。このような症状は高校生以上の年齢に多く発症し、女性に多く、10歳代後半から20歳代に最も多くみられます。最近では、小学生にも発症することもあるといわれています。

 呼吸困難感は、空気がうまく吸い込めない感じとして表現されることも少なくありません。過換気が始まると、それに引き続いて動悸・胸痛・胸苦しさなどが出現する場合や、あるいはめまい感・頭痛・非現実感(自分が体験していることが現実とは思えない感覚)が出現して、時には意識障害を起こす場合もあります。

 治療は過換気を引き起こす可能性がある呼吸器や循環器あるいは中枢神経系や内分泌系の疾患がないことを確認することが基本です。以前は紙袋に鼻と口をかぶせて呼吸させるペーパーバック法が行われていましたが、低酸素血症により致死的になり得る症例があることから、現在はこの治療法は推奨されていません。現在では、心理的に安定させるように病状を説明し、ゆっくりとした呼吸を促すことが優先され、改善しない場合は精神安定剤の内服か注射が行われます。発作のない時期には、心理カウンセリングや抗不安薬が処方されることがありますが、薬物依存症に対する注意も必要です。

 漢方治療では、「過換気症候群」が心理的要因、特に精神的なストレスが関与していることから、精神安定作用をもつ漢方薬を用います。『抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)』がまず処方することが多いのですが、不安や落着きがない場合は『甘麦大棗湯(カンバクタイソウトウ)』もよい適応です。特に小・中学生にはお勧めです。また、精神疾患が目立つ場合には『柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)』『柴胡加竜骨牡蠣湯(サイコカリョウコツボレイトウ)』なども使います。特に気分の落ち込みが辛い場合にはこれらに『香蘇散(コウソサン)』という気を持ち上げる漢方薬を併用したりもします。