めまいに対する漢方薬①|産婦人科コラム

めまいに対する漢方薬①

2011年09月08日
 

『74歳Sさん。二年前に回転性めまい、耳鳴りが起きたが自然によくなった。一ヶ月前から再び同じ症状が起こり、内科や耳鼻科を受診するが改善を認めず、漢方治療を試してみたいとの事で来院。』

Sさんのめまいは頭の位置によって起こりやすく、ほぼ毎日2、3回出現するようでした。

歩くときにふらつくこともある。どちらかというと暑がりのようですが、最近は足が冷えるとの事。息子達からは「いいかげん歳なんだから、仕方ないんじゃないの」と云われて憤慨していました。

めまいやふらつきは、「水毒(水のバランスの乱れ)」と考えて東洋医学では利水剤を用いることが多く、Sさんには、たちくらみに有効な『苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)』を1週間処方しましたが、めまいに変化はなく、歩行時のふらつきやフワフワ感を強く訴えたため、『真武湯(シンブトウ)』に変更してみました。

『真武湯』は高齢の方が「雲の上を歩いているような感じ」を訴えるときによく用いられますが、2週間後少しは良いときもあるものの、あまり改善はないようでした。

めまいに有効と思われる利水剤が効果を認めなかったことから、もう一度症状を再度問い直してみました。「ときどき下腹痛もあり、いらいらもする」との事で、舌は赤暗色で、舌の裏の血管が浮き出ていました。

これは典型的な「お血」(オケツ)(血の循環の異常)で、この年齢には少ないケースです。

そこで、いらいら感も考慮して『加味逍遥散(カミショウヨウサン)』に変更してみました。一ヶ月後には「今の薬を飲み始めてから2週間位で、めまいはよくなってきた。たちくらみやふらつきも、最初と比べると2割程度まで軽くなった。」との事。有効と判断し、現在も同じ処方で経過は良いようです。

Sさんには、いらいらなどの自律神経症状と「お血」を指標に『加味逍遥散』を投与してめまいの改善をみましたが、古典には、頭がぼんやりして目がくらむような症状いわゆるめまいにも応用可能であることが記されています。

『加味逍遥散』は更年期障害の不定愁訴にもよく用いられるので、すこしそのお話をしたところ、何を勘違いしたのか、Sさんは息子達に「私は、まだ更年期の薬で良くなるんだから、若いって証拠だよね」と言ったようです。

たしかに74歳で更年期障害(決してそうではナイ!)と思われるのは、身体的には若いという捉え方はするでしょうが…。

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