嗅覚障害と漢方薬|産婦人科コラム

嗅覚障害と漢方薬

2020年05月01日
 

嗅覚(きゅうかく)障害は、病態が十分に判明しないこともあって、明確な診療コンセンサスが得られていない疾患です。嗅覚障害は基本的分類としては、においの感覚が失われる嗅覚脱出と、においの感覚が弱まる嗅覚低下があります。また、異嗅症といって、もののにおいを嗅いだときに「本来のにおいと異なるにおいを感じる」障害や「においがないのに、においを感じてしまう」障害のほかに、嗅盲という「特定のにおいだけを感じない」障害や、嗅覚過敏で「においを常に強く感じて不快感が生じる」症状もあります。

一方、病態の観点からは「気道性」といって、嗅細胞まで空気が届かないためにおこる場合(多くは副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎が原因)や、「嗅神経性」といって嗅細胞自体にダメージを受けて嗅覚低下を起こす場合(ウイルス感染などの感冒後など)、「中枢性」といって脳に伝わる神経伝達路の障害で生じる場合(アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患や顔面・頭部外傷など)があります。

頻度としては、慢性副鼻腔炎が最も多く、次いで感冒後の嗅覚障害、原因不明、アレルギー性鼻炎、顔面・頭部外傷が続きます。

治療法としては、耳鼻咽喉科でステロイド(点鼻・経口)投与や内視鏡下鼻副鼻腔手術、抗ヒスタミン薬が推奨されていますし、第一選択となります。ガイドラインでは「嗅覚障害に漢方治療は有効か?」という項目で「感冒後嗅覚障害に対する『当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)』を提案する」と記載されており、実際に臨床研究でも有効な治癒率が得られています(治癒51%・軽快48%)。また、ステロイド点鼻治療が無効例だった患者に『当帰芍薬散』や『人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ)』が有効であった報告もあります。これらの漢方治療投与による研究で有害事象が報告されていない点も 重要なポイントであると思います。

嗅覚障害に関しては、まずは耳鼻咽喉科専門外来による標準治療が大切です。その際に漢方薬を併用するかなどは主治医と相談してみるとよいでしょう。ただし、漢方薬の投与で嗅覚障害の改善がみられるまでは数か月以上時間を要する場合が多い点は留意して下さい。

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