更年期の高血圧|産婦人科コラム

更年期の高血圧

2010年06月07日
 

『55歳女性Nさん。52歳頃から内科にて高血圧を指摘され、降圧薬を服用したが、ふらつきがみられ、中止。53歳で閉経した後から血圧が不安定となり、頭痛・肩こり・のぼせの症状が出現したとの事。来院時に一度循環器科を受診することを勧めるが、本人が降圧薬の服用を強く希望せず、漢方薬を試したい希望あり。』

Nさんの当院での初診時の血圧は156/94mmHg。赤ら顔で肥満ぎみな方で、「とにかく、のぼせやすい。毎日、排便はあるがスッキリ感がない。」と言いながら、家族や職場への不満を延々と訴えていらっしゃいました。

「胸脇苦満(キョウキョウクマン)」(詳細は以前の号)がしっかりと認められ、下腹部のハリ、ストレスも考慮し、まずは『大柴胡湯(ダイサイコトウ)』と『桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)』を4週間投与しました。

「胸脇苦満」はやや軽減しましたが、肝心の自覚症状は変わりません。そこで、「のぼせ」にも注目して、『三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)』に変更してみることにしました。

変更して2日目に多量の排便があり、「顔のほてりが軽くなり、つかえがスーッととれていく感じがした。」との事でした。4週間の服用で血圧もほぼ正常となり、諸症状も軽減したようです。

更年期の高血圧症の中には、しばしば心気症傾向が強く、降圧薬だけではコントロールが困難なばかりか、逆にその薬の副作用に悩まされることもあります。

一般的には「柴胡(サイコ)」という生薬が配合されている漢方薬が有効ですが、症状によっては「お血(ケツ)」(詳細は以前の号)を改善する薬も併用したりします。

Nさんの場合は、『桂枝茯苓丸』という「お血」の改善薬の代表選手を使いましたが、有効ではなく、「柴胡」に加えて「黄連(オウレン)」という「清熱薬」が配合された『三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)』が効果的でした。

このような薬の加減は個人差があり、難しい点もあるのですが、いずれにせよ「柴胡」が配合された漢方薬は、更年期にみられる「動揺性」高血圧には使ってみる価値はあるかと思われます。

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