更年期障害と漢方薬(2)|産婦人科コラム

更年期障害と漢方薬(2)

2009年03月01日
 

『49歳主婦Nさん。いつもお酒を飲んでいるように顔が真っ赤で恥ずかしいとの訴えでした。5年前に他院にて子宮筋腫のため子宮を摘出する手術を受けたとの事。去年から、のぼせと顔面の紅潮が起こり始めたようです。漢方薬を試したい希望で来院されました。』

週に数回起こる頭痛と汗を伴う顔面の強いのぼせ、いつもある下腹部の張った感じ、不眠、イライラ、頻尿…と症状もたくさんありました。

Nさんは、小太りの体型で頬はたしかにお酒を飲んだように赤く、足の皮膚にはちょうど糸ミミズのような細い血管(細絡といいます)が浮き出ていました。
お腹を押すと、左下腹部は痛がります。これらは東洋医学的には典型的な「お血(オケツ)」(以前に紹介済み)の症状で、血の巡りが悪化し滞った状態で、Nさんのように小太りの中年女性(失礼!)によく見られ、また手術などによって必ずしもではないのですが起こりやすくなります。

Nさんには、熱をもった「お血」で便秘もありましたので、『桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)』を処方してみました。3日間で頭痛・のぼせ・発汗・便秘が、一ヶ月でイライラや不眠などが消失したようです。

「桃核(トウカク)」とは「桃の種」という意味で、停滞した血を巡らせる作用があります。つまり、『桃核承気湯』は「桃の種」が成分として含まれ、「承気」とは、熱をもち上昇した気を下に受け流すことを意味します。

いわば、体力の水分・栄養分である血を動かし、活発な生命サイクルを起こさせる漢方薬ともいえます。Nさんのような上半身ののぼせや熱を下げようというのがこの薬の名前の由来です。

Nさんが次回来院したときは、「お酒を飲んだのではなく、桃の花のような素敵なお顔ですよ。」と声をかけようかなと思っています。とにかく、『桃核承気湯』はNさんに回復の兆しを与えたお薬のようですね。

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