じとじと汗に黄耆建中湯|産婦人科コラム

じとじと汗に黄耆建中湯

2008年08月05日
 

『3歳Ⅰちゃん(女児)。生後からしょっちゅう風邪を引きやすく、一度かかると長引いて咳や鼻水がなかなか良くならない。序弱体質で食も細い。ふだんから汗っかきで特に寝汗をよくかいている。パジャマが夜間に汗でかなり湿って夜中に着替えが必要な程らしい。母親が「体質改善」?を希望(実はお母さん自身も当院の患者さんです)されて来院。』

よく「虚弱体質?」という言葉を耳にしますが、一般的には「食が細い・顔が青白い・暑がりの寒がり・風邪を引きやすい」などがありますが、東洋医学的な所見で重要なサインの一つに「お腹の腹直筋がピンと張った状態」があります。

これは誰でも調べることが容易です。横になって足を伸ばした状態で、お腹を触ると太い筋が2本縦に走っている感じが判ればこのサインです。要するに、お腹の壁がとても薄くなっている状態なのです。

Ⅰちゃんには『黄耆建中湯(オウギケンチュウトウ)』を夕食後に成人の6分の1の量を飲んでもらうことにしました。1週間後にはお母さん曰く、寝汗がまず目立って減ったことに気づいたようです。2週間後に風邪を引いたようでしたが、軽く済んだとの事。

その後、調子がいいので半年間飲んでもらいましたが、「鼻水・鼻詰まりが最近ひどいので漢方薬で何とかしてほしい」との希望がありましたので、『小青竜湯(ショウセイリュウトウ)』(以前にも紹介)に変えたのですが、寝汗がまた出てきたようでした。

そこで『黄耆建中湯』は中止せずに『小青竜湯』も症状に併せて一緒に飲んでもらうことにして約1年経過しますが、最近は食欲も旺盛で、寝汗もなく、「虚弱体質?」は返上のようです。

元来の虚弱者や病後で体力が弱ったときには、しばしば暑さや寒さの耐久性が低く、じとじとした気持ちの悪い汗や寝汗をかきやすいことがありますが、この汗は決して積極的な気持ちいい汗ではないのが特徴です。

『小建中湯(ショウケンチュウトウ)』(以前に紹介)は、虚弱な小児の、いわゆる体質改善によく用いられる漢方薬ですが、これに「黄耆」を加えたのが『黄耆建中湯』です。この「黄耆」は皮膚に力がなくて汗がもれ出るというイメージの時に使う生薬で、私の場合、『小建中湯』を使いたくなるような方で、二の腕を触ってみてじとーっとしているときには『黄耆建中湯』をよく使います。

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