治ったはずの胃潰瘍?|産婦人科コラム

治ったはずの胃潰瘍?

2007年07月11日
 

『46歳Qさん。消化器科で胃潰瘍を指摘されて十数年経つ。胃潰瘍は内服治療で経過を年2回内視鏡(胃カメラ)で診てもらっており、「潰瘍はほとんど治っているから、そんなに痛むはずない。少し神経質になっているせいもあるのでは?」と主治医に指摘されるが、実際に痛いのだからどうしようもない。知り合いに紹介されて当院受診。』

Qさんの自覚症状は、空腹時に胃が痛み、寒いと胃がカチカチ?になる感じがして、お腹全体が張り、食べ過ぎなくても胃がもたれて胸やけがするということでした。この症状は季節の変わり目に特に悪化するらしく、他には生理不順はないが生理痛がひどく、出血量も多いようです。

舌をみるとうすいピンク色で、お腹は胃のあたりを押しても痛がりませんが、左右の腰の骨の内側あたりを押すとかなり痛がりました。血液検査では軽い貧血も認められましたが、とにかくQさんには東洋医学的には「お血(オケツ)」(詳しくは前号参照)が背景にある症状でした。そこで、『当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)』と『人参湯(ニンジントウ)』を処方しました。

効果は消化器科の先生に申し訳ないくらいに劇的でした。十五年間も続いた痛みが飲み始めて三、四日で消えてしまったのです。胃の重苦しさも胸やけもない。要するに、何ともなくなったのです。さすがに私も「ほんまかいな?(なぜか関西弁)」と思いましたが、『当帰芍薬散』の効果は1ヶ月後の生理ではっきり表れました。生理痛も弱くて出血量も少なく、胃痛のみならずこんなにラクな生活は久しぶりとの事でした。

Qさんは、その後順調に良くなり、『当帰芍薬散』は4ヶ月で飲まなくなり、止めた後も生理の調子は悪化せず、『人参湯』だけは本人も食欲が出ると気に入ってその後の転居先でも飲み続けているようです。

漢方薬を使っていますと、ときどきこのような「1発OK!」という劇的な効果にめぐりあいます。他の治療法では、こういう切れ味はちょっと味わえませんね。こういう症例を経験すると、劇的な効果を求めて私たちは懸命に効きそうな薬を探す努力を惜しまなくなります。患者さんからは感謝されるし、いわゆる「医師冥利に尽きる」気分を味わうときなのです。

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