月経前症候群|産婦人科コラム

月経前症候群

2006年12月16日
 

『38歳Nさん。5年前位から、生理の1週間前位になると頭痛と吐き気に悩まされる。生理痛はさほどひどくはないが、生理前になると、手がむくみ、耳は詰まった感じがする。時には夜中に動悸がして眠れないことや、イライラして子供に当たってしまうことがある。前医で桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)を処方されたが、効果が感じられないとの事で来院。』

Nさんは、丸顔でやや黒味を帯びた赤ら顔をしており、一見すると確かに『桂枝茯苓丸』が有効でありそうな方でした。

しかしながら、症状は典型的な月経前症候群(月経前に続く精神的あるいは身体的症状で、月経発来とともに減退ないし消失する)であり、まず『加味逍遥散(カミショウヨウサン)』(以前の号参照)を処方しました。2週間で日中のだるさは改善したが、頭痛は変わらないとの事でした。そこで、のぼせて頭痛することを参考にし、さらにイライラも取りたいことを考慮して『女神散(ニョシンサン)』に変更しました。

この効果は著しく、2週間で頭痛・イライラは無くなり、一ヶ月後は動悸・不眠やむくみもすっかり消失して、すこぶる好調になりました。

『女神散』は浅田飴で有名な浅田宗伯という古人が創製した漢方薬で、もともと戦地での神経症の治療に用いられたものでしたが、婦人の更年期や産前産後の自律神経失調症状にも著効なので使われるようになりました。

マタニティーブルーなどにも私は処方します。Nさんが赤ら顔であったのは、顔面の充血であり、『女神散』には『加味逍遥散』には含まれていない清熱作用(熱を取る)をもつ生薬が配合されていますので、この配合の妙が有効だったのでしょう。

このように生薬の配合によって効き方がガラリと変わるので、効かない薬は我慢して飲み続ける価値はないのです。2週間で有効性が得られない場合はもう一度漢方薬の生薬構成の見直しをすることが大切なのです。

余談ですが、ある医師から以前に『女神散』を男性に処方して患者さんから女性の薬を処方されたとクレームがあった話を聞いたことがあります。漢方薬は名前でイメージされるのが辛いですね(笑)。

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