病は「気」から?(その4)|産婦人科コラム

病は「気」から?(その4)

2005年10月08日
 

今回も症例を紹介しながら解説します。

『48歳、Dさん、女性。元々健康だが最近カゼでもないのに咳が出る。家庭内でのストレスが増してから症状が出てきた気がする。むくみやすい体質で、朝夕は気になるほどむくむ。喉のあたりの不快感も気になり、耳鼻科受診したが特に異常なしとの事。』

漢方医学では「大逆上気(タイギャクジョウキ)」という言葉がありまして、以前に解説した「気の上衝(気逆)」のはげしい状態を意味します。「気」の循環に異常をきたして、下から上へ「気」がどんどん上がると、上半身に様々な症状(頭のみ暑い、吐き気、喉が詰まる感じなど)が出てきます。

Dさんは、カッカした話し方で、青筋をたてて咳き込んでいました。喉の違和感も「気逆」の結果によるものと考えて、今回は麦門冬湯[バクモンドウトウ]を処方してみましたが、1週間で咳は軽くなり、さらに2週間処方し、咳はほぼ消えました。

この薬は咳止めで有名ですが、本来の適応は「大逆上気」なのです。この薬には潤す作用(湿り気を与える)を有する生薬が含まれているので、「舌が乾く、喉の奥がカラカラ」といった時に使うことが多いのですが、半夏[ハンゲ]という生薬が含まれているのがミソでして、これは逆に乾かす作用をもっています。

単に潤したいなら、こんなものは要らないはずですね。ここが漢方薬のおもしろい点なんです。

つまり、麦門冬湯[バクモンドウトウ]はただ乾いた症状のみでなく、「むくみ」の様にどこかに水のアンバランスがある場合に使うと良い薬なのです。以前お話した「水毒(スイドク)」ですよ。二日酔いの時なんかは口渇くけど顔がむくんだりしますよね。

Dさんは、むくみも取れて喜んでいましたが、新たな悩みもできたと云われました。「先生、顔のむくみがとれたのはいいんですけど、顔のしわが目立つようになっちゃいました。友人には『あんた、前はアンパンマンみたいだったからねえ』といわれたんですけど。」との事。

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