不妊症と漢方薬①|産婦人科コラム

不妊症と漢方薬①

2012年11月05日
 

『30歳Sさん。結婚5年目で子供に恵まれない。婦人科では「器質的な異常はない」と云われた。排卵誘発剤を使用すると、体調不良?となるために中止した。漢方薬を試してみたい希望にて来院。』

Sさんは非常に冷え症で疲れやすく、多汗な方でした。5年目から季節の変わり目になると、顔が赤くなり、ブツブツとした吹き出物ができやすいようです。このため化粧ものらない。月に1回はのぼせる。口が渇く感じもすることが多い…と訴えも多い方でした。

体格は痩せてやや小柄で、血色は蒼白で、皮膚のつやが悪い印象でした。まずは、漢方薬が希望でしたので、『当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)』を2週間飲んでもらいましたが、全く変化なしとの事。もう2週間辛抱して飲んでもらったところ、「手足が少し温かい感じがしてきた」と云うので、『附子(ブシ)』を加えてさらに温めてみることにしました。

その後は、「かなり温かくていい」と3ヶ月毎に薬を取りにきていましたが、こちらもSさんのことを不妊と忘れかけていた頃(ちょうど飲み始めてから7ヶ月位)に突然「生理が遅れています」と来院され、妊娠と判明しました。

Sさんは数ヶ月集中的に漢方薬を服用して、結果的に妊娠したケースでしたが、これをマネして同じ漢方薬で妊娠すると早合点してはいけません。要は、Sさんは「冷え」が悪さをしていたのです。この「冷え」を治す治療手段としての漢方薬が有効だったにすぎません。

このように、漢方薬は「証」(身体の状態)を把握することが重要なカギですので、「不妊」という点より「冷え」という状態に着目することが大切なのです。よく、「妊娠できるような漢方薬はありませんか?」と問われることが多いのですが、答えは「その方の身体の状態によって、使うお薬は全く違います」というお返事になります。まずは、ご自分の「身体の状態を良くする」ことが漢方医学的な不妊治療につながるとご理解下さい。

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